タイトル | 凍結保存したニワトリ始原生殖細胞からの遺伝資源再生法 |
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担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 | 2003~2005 |
研究担当者 |
田上貴寛 武田久美子 韮澤圭二郎 |
発行年度 | 2005 |
要約 | 凍結保存したニワトリ始原生殖細胞(PGC)を同性の他系統ニワトリ胚に移植して作出したキメラニワトリ同士の交配によって個体の再生を行うことができる。 |
キーワード | 始原生殖細胞、凍結、再生、ニワトリ、家畜育種 |
背景・ねらい | 日本鶏の品種の多くは飼養規模が小さく、絶滅のおそれのある品種もある。受精卵での保存が困難なニワトリの場合、始原生殖細胞(PGC)を凍結保存し、これを多産卵系ニワトリ胚に移植することによって個体の再生を行うことができれば、日本鶏の遺伝資源保存技術は飛躍的に向上させることができる。そこで、凍結保存したPGCからキメラ世代を介してニワトリ遺伝資源を再生する方法を確立する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 孵卵3日目のニワトリ胚より採取したPGCは、10%DMSOに2%デキストランを加えた血清中で凍結する方法により長期保存が可能である。 2. ニワトリPGCは異性の生殖巣では配偶子形成が困難であることから、本法では移植するドナーPGCとレシピエント胚の性を同一にしてキメラニワトリを作成する。その作成法は以下の通りである。ドナーPGCは採血後に胚の性判別を行い、雌雄ごとに密度勾配遠心法によりPGCを分離した後、凍結保存を行う。凍結融解したPGCは、同性の孵卵3日目のレシピエント胚(横斑プリマスロック種)へ移植することによりキメラ胚を作成する。これらは、体外培養法を用いて孵化させる(図1)。移植するPGC(ドナーPGC)およびレシピエント胚の性判別には、ニワトリ性染色体ZおよびWに存在するCHD1ZおよびCHD1Wを検出するPCR法を用いる(平成15年度成果情報)。 3. 上記の方法で作成したドナーPGC由来の配偶子形成の有無は、作成したニワトリとドナーPGCと同一鶏種との交配試験することにより行う。今回作成したニワトリでは、10羽のうち9羽からドナーである烏骨鶏PGC由来の後代が得られたことから、作成したニワトリの90%が移植PGC由来の配偶子を形成している。以上のことから、本法により効率的に生殖巣キメラニワトリを作出することが出来る。 4. ドナーPGC由来の配偶子割合が高い雌雄のキメラニワトリを交配させることにより、精子および卵子が凍結PGC由来のニワトリを得ることが可能になる(図2)。本法により、これまでに受精卵による長期保存が不可能だったニワトリに関して、凍結保存した始原生殖細胞(PGC)からキメラ世代を介して遺伝資源を再生できる。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 本法を利用することにより、個体保存ではなく、凍結保存した細胞によりニワトリ遺伝資源を保存できる。 2. 種が異なる他の家禽(うずら、あひる等)の場合には、ニワトリをレシピエント胚として用いる本法により再生可能となるかは不明である。 |
図表1 | |
図表2 | |
カテゴリ | アヒル 育種 遺伝資源 鶏 品種 |