タイトル |
塩分濃度の高い堆肥の施用による野菜のカリウム含量および糖度の向上 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 |
2002~2006 |
研究担当者 |
江波戸宗大
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発行年度 |
2006 |
要約 |
塩分濃度の高い堆肥を利用するとカリウム含量および糖度が高い作物になる傾向がある。ただし、土壌中の陽イオンバランスの関係で作物中のカルシウム含量が下がり、水分ストレスがかかるために果実が小さくなる傾向を示す。
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キーワード |
塩分、カリウム、塩分濃度、堆肥、野菜、陽イオンバランス、飼料作物栽培・調製・評価
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背景・ねらい |
家畜排せつ物法の施行により塩分濃度の高い堆肥(高塩類堆肥)が生産されており、耕種農家は利用を避ける傾向にある。高塩類堆肥の扱いにくい特徴として塩分濃度、特にカリウム(K)含量が高いことが挙げられるが、作物栽培において、この欠点を生かす方法を明らかにすることで、高塩類堆肥の利用を促す。2005年より新しくなった「日本人の食事摂取基準」(厚生労働省)によると1日当たりのK摂取量が2000mgから3500mgに引き上げられ、今まで以上にKが必要となった。また、消費者は「甘さ」を品質の判断材料にする傾向がある。
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成果の内容・特徴 |
- 現地実証圃場、所内温室および所内圃場(栃木県那須塩原市)において元肥に普通堆肥(牛ふん堆肥, EC値1.81mS/cm)、高塩類堆肥(牛ふん堆肥, EC値12.4mS/cm)を用いて様々な作物を栽培した。現地圃場では、高塩類堆肥区は元肥のみで栽培し、化成肥料区および普通堆肥区は作物の生育を揃えるために化成肥料の追肥を農家が行った。
- 現地実証圃場で栽培するスィートコーンは高塩類堆肥施用量が増加すると子実のK含量が高くなる傾向にある。高塩類堆肥を連用すると年が経つごとに子実のK含量が高くなる(表1)。ホウレンソウも同様に高塩類堆肥施用区でK含量が高くなる傾向にある。農家による追肥のため全体的に標準分析値よりも高くなるが、高塩類堆肥区の方がさらに高い傾向がある。
- 温室で栽培するイチゴおよびミニトマトは高塩類堆肥施用量が増加すると1株あたりの収穫個数が増加し、1個あたりの重さが減少する傾向にある(表2)。所内圃場で栽培したキュウリも同様である。BRIX糖度については、イチゴでは4t/10a施用で、ミニトマトでは6t/10a施用で高くなる。これは高塩類堆肥施用により土壌の可溶性塩類濃度が高まり、水分ストレスがかかるためと考えられる。しかし、施用量の増加と共に糖度が上がるという訳ではない。
- 高塩類堆肥を施用するとスィートコーン子実やホウレンソウのカルシウム(Ca)含量が低くなり(表1)、ミニトマトではCa欠乏症が発生することもある(平成17年度 畜産草地研究成果情報)。これは土壌の陽イオンバランスがK供給に大きく傾き、Caが供給されにくくなるためと考えられる。
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成果の活用面・留意点 |
- 耕種農家による野菜栽培への高塩類堆肥の利用を促すことができる。
- 本成果は完熟した高塩類堆肥を用いた結果である。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
肥料
いちご
きゅうり
飼料作物
ほうれんそう
ミニトマト
野菜栽培
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