タイトル |
地球温暖化による気温上昇が我が国の肥育豚の飼養成績に及ぼす影響予測 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 |
2002~2005 |
研究担当者 |
高田良三
山崎 信
大塚 誠
村上 斉
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発行年度 |
2007 |
要約 |
肥育去勢豚の飼養成績と環境温度との関係を実験的に求める。得られる関係式を用いて日増体量に対する地球温暖化の影響を各地域の月平均気温の変動予測シナリオから推定する。その結果、2030年、2060年と年代の経過と共に日増体量の低下する地域が拡がり、また低下する程度もより厳しくなる
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キーワード |
地球温暖化、飼養成績、暑熱環境、メッシュ気候データ、肥育豚
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背景・ねらい |
2007年2月に公表されたIPCCの第4次報告書では今世紀末までに世界の平均気温は1.1~6.4℃上昇すると報告している。温暖化によって農畜産物の生産性が影響を受けることはよく知られており、畜産においては飼養成績が低下する。本研究では、高温環境下の気温と飼養成績低下との関係を肥育豚を用いて実験的に求め、そこで得られたデータを将来の月平均気温の変動に当てはめることによって、地球温暖化が肥育豚の日増体量に及ぼす影響についての予測を行う。
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成果の内容・特徴 |
- 肥育去勢豚(平均体重42kg、21頭)を用い、23℃、28℃、30℃、33℃の一定環境温度下(相対湿度は60%)で3週間の飼養試験を行って、環境温度と飼養成績との関係式を得る。
- 環境温度と日増体量との関係を図1に、飼料摂取量との関係を図2に、飼料効率との関係を図3に示す。日増体量および飼料摂取量は環境温度の上昇に伴い2次曲線的に低下する。
- 日増体量が23℃時のそれに対して5%、15%、30%低下する時の気温はそれぞれ24.5℃、27.3℃、30.4℃である。
- 6~9月について、その気温域に該当する区域を日本地図上に図示するプログラムにより、肥育豚の日増体量に及ぼす地球温暖化の影響を図4に示す。2030年、2060年と年代の経過と共に日増体量の低下する地域が拡がり、また低下する程度もより厳しくなる。8月においては現時点ですでに西日本の沿岸部を中心に日増体量の低下が認められるが、2060年になると北海道の一部および標高の高い山間部を除いた大半の地域で日増体量の低下が予測される。特に関東以西では15~30%の厳しい日増体量の低下が予測される。
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成果の活用面・留意点 |
- 将来の我が国における豚飼養の予測に対して参考となる。
- 夏季の暑熱環境下における豚飼養試験の研究に対して参考となる。
- ここで示す結果は肥育前期去勢豚で、特に暑熱対策を取らなかった時の場合である。体重の違いによって結果がやや異なり、体重が重い豚ほど暑熱環境の影響を強く受ける。
- ここで得られた環境温度と飼養成績との関係式は環境温度が一定温度の場合であり、自然界のような日内変動を示す場合には結果がやや異なる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
飼料効率
豚
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