タイトル |
わが国における体細胞クローン後代牛の生産と飼養状況 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研究所 |
研究期間 |
2006~2010 |
研究担当者 |
渡辺伸也
高橋清也
赤木悟史
金田正弘
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発行年度 |
2007 |
要約 |
2000年以降、わが国で生産された体細胞クローン後代牛は202頭(27機関)である(2006年6月現在)。後代牛の死産、生後直死、病死および事故死の発生率は、一般牛と同水準と考えられる。また、病理所見が残っている試験と殺牛の96.7 % (58/60)で異常がない。
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キーワード |
牛、体細胞クローン後代牛、生産、飼養状況
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背景・ねらい |
体細胞クローン牛の産業利用を考えると、すでに優良後代牛を多数生産している種雄牛などのコピーとそれらの種畜利用が有望である。わが国では、この用途を想定した後代牛の試験が行われているが、その生産や飼育状況は、農林水産省による体細胞クローン牛の生産状況のプレスリリースを参照してもわからない。そこで、2006年8月に畜産草地研究所が実施した全国調査のデータに基づき、後代牛の生産や飼養状況の概要を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 最初の後代牛は、2000年7月10日に誕生している。2001年以降の後代牛生産は、減少傾向にある(図1)。調査時点で、27機関で202頭の後代牛が生産されている。後代牛の生産方式をみると、95.0%(192/202)が人工授精、残る5.0%(10/202)が胚移植で生産されている。その他、体細胞クローン雌牛を仮腹とした胚移植により生産された一般牛が18頭、体細胞クローン牛の孫牛が2頭生産されている。
- 生産された後代牛のうち、44.6 % (90/202)が黒毛和種、32.2 % (65/202)がホルスタイン種である(図2)。そのうち、52.5%(106/202)を雌が占めている。
- これまで生産された後代牛において、死産:8.9 % (18/202)、生後直死:1.5 % (3/202)、病死:6.9 % (14/202)および事故死:0.5 % (1/202)である(図3)。なお、同時期の畜産草地研究所のホルスタイン種・雌雄(一般牛)においては、死産:10.6 % (32/302)、生後直死:0.3 % (1/302)、病死:6.6 % (20/302)および事故死:1.6 % (5/302)である。
- 後代牛の試験と殺は、85頭で実施されている(図3)。試験と殺の主要目的は、肥育試験(40/86, 47.7 %)と病理解剖・検査(22/86, 25. 6%)である。残る24頭が不明(記録なし)である。病理所見が残っている後代牛の96.7 % (58/60)で異常が認められていない。
- 調査時点で生存している後代牛は、58頭(28.7 %)である(図3)。これらの牛の主な用途は、肥育試験(17.2 %, 10/58)、繁殖性調査(17.2 %, 10/58)および健全性調査(17.2 %, 10/58)である(図4)。
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成果の活用面・留意点 |
- 後代牛の生産や飼養の状況を把握するための資料となる。
- 特に断りがない限り、遺伝的な父母の両方、あるいはそのいずれかが体細胞クローン牛である牛(体細胞クローン牛の産子)を「後代牛」と表記している。
- 同時に実施した体細胞クローン牛の調査では、農林水産省のプレスリリースによる頭数(495頭、2006年3月現在)の97.3%(482頭)のデータが収集できたことから、後代牛についてもこれと同じ割合をカバーしているとみられる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
繁殖性改善
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