カイコ腸内での植物葉面細菌の定着と細菌間の遺伝子伝達

タイトル カイコ腸内での植物葉面細菌の定着と細菌間の遺伝子伝達
担当機関 蚕糸・昆虫農業技術研究所
研究期間 1996~1996
研究担当者
発行年度 1996
要約 植物葉面細菌Erwinia herbicola群細菌はカイコ腸内に定着、増殖し、腸内で同種およびEnterobacter cloacae等異種細菌に、接合によって遺伝子伝達を行うことが明らかになり、昆虫を媒体とした細菌の遺伝子拡散が示された。
背景・ねらい 植物葉面と食害昆虫から共通に分離される細菌は植物上と昆虫腸内のどちらでも定着、増殖し、循環して生息していることが考えられる。昆虫腸内では多種の細菌が高密度で分布しており、細菌間の遺伝子拡散に大きな役割をしている可能性もある。これらについて検討するために、植物葉面細菌E.herbicola群細菌のカイコ腸内への定着性について調べるとともに、カイコ腸内での細菌間の接合によるプラスミド伝達について検討する。
成果の内容・特徴
  1. 春から夏までの間、蚕糸・昆虫農業技術研究所圃場のクワ葉面から多数の細菌が得られたが、E.herbicola群細菌、Pseudomonas syringaeが優勢フローラであった。また、全齢桑葉育した5齢カイコからは4種の細菌が分離され、E.herbicola群細菌、Staphylococcus sp.が優勢フローラであった。
  2. 植物葉面細菌を含む人工飼料をカイコに与え、中腸及びフン中の細菌数を調べたところ、カイコ、クワ由来のE.herbicola群細菌は定着、増殖していたが(図1)、P.syringaeは定着しなかった。これらの結果から、植物葉面細菌の一部は昆虫腸内で定着、増殖し、再び植物上に拡散していることが示唆された。
  3. 昆虫腸内に定着するE.herbicola群細菌間のカイコ腸内でのプラスミド伝達について検討したところ、分離細菌からは高頻度に伝達プラスミドpBPW1::Tn7、RSF1010を保持する受容菌(接合菌)が検出された(表1)。また、E.herbicola群細菌からE.cloacaeへの伝達でも、接合菌が分離された(表1)。さらにRSF1010の移行はサザン法によっても確認された(図2)。これらの結果から、E.herbicola群細菌、E.cloacae等の植物・昆虫定着細菌は昆虫腸内で接合伝達することによって、自然界において遺伝子拡散していることが示唆された。
成果の活用面・留意点 これまで直接的には検討されていなかった一部の植物葉面細菌の昆虫腸内への定着が示され、その生態の一部が明らかになった。また、E.herbicola群細菌等、氷核活性細菌の昆虫腸内定着による越冬害虫の防除等の可能性が示された。
図表1 227316-1.gif
図表2 227316-2.jpg
図表3 227316-3.gif
カテゴリ 病害虫 カイコ 害虫 防除

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