タイトル |
カイコにおける尿素態及びアンモニア態窒素の特異な代謝経路 |
担当機関 |
蚕糸・昆虫農業技術研究所 |
研究期間 |
1996~2000 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1996 |
要約 |
カイコの尿素態及びアンモニア態窒素の特異的な代謝について、トレーサーや代謝阻害剤を用いて解析し、アンモニア態窒素の同化にグルタミン合成酵素とグルタミン酸合成酵素が関与していることを明らかにした。また、尿素態窒素の同化はカイコを桑葉で飼育した場合に限って認められた。
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背景・ねらい |
カイコを人工飼料で飼育すると、熟蚕期以降の体液中に尿素が多量に蓄積することが知られているが、最近当研究室ではカイコの5齢幼虫がアンモニア窒素を絹タンパク質の窒素源として再利用することを明らかにした。そこで、カイコにおいて尿素やアンモニアのような窒素老廃物がどのように代謝・再利用されているか生理・生化学的手法を用いて解明する。
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成果の内容・特徴 |
- アンモニア同化の初期段階に関わる諸酵素の活性を測定したところ、脂肪体中にグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GDH)、グルタミン合成酵素(GS)、グルタミン酸合成酵素(GOGAT)の活性を認めた。
- グルタミン合成酵素の特異的な阻害剤を投与したところ、体液中のアンモニアが急増し、グルタミンが減少するとともに、タンパク質へのアンモニア窒素の取り込みが抑制された。このことから、アンモニア窒素の同化にGS/GOGAT経路が働いていることが推定された。
- 5齢を桑葉飼育した場合に限って、熟蚕期以降の体液中にウレアーゼの活性が検出され、体液中の尿素は急減することを確認した。桑葉飼育蚕においては、体液中に存在するウレアーゼにより尿素はアンモニアに分解され、その後は人工飼料育蚕と同じように絹タンパク質の合成に再利用されることが窒素の同位体を用いた実験から判明した(図1)。
- 以上の結果から、カイコにおける尿素・アンモニア代謝経路について推定した(図2)。
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成果の活用面・留意点 |
得られた成果は、カイコにおける窒素代謝の特異性を理解する上で重要な基礎的知見であり、今後カイコを利用した物質生産システムを構築するための飼料・飼育技術の開発に貢献すると思われる。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
カイコ
桑
飼育技術
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