タイトル |
へテロ2本鎖形成を利用した共優性分子マーカーの作出 |
担当機関 |
蚕糸・昆虫農業技術研究所 |
研究期間 |
1997~2000 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1997 |
要約 |
カイコゲノムの高密度連鎖地図作成に必要な共優性分子マーカーを効率的に作出する方法として、DNA多型をへテロ2本鎖形成による電気泳動度の変化により検出する方法を開発した。
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背景・ねらい |
従来、比較的保存されている配列から共優性マーカーを作出するにはRFLP法が用いられてきたが、この方法は大量の試料を必要とし、昆虫等の小動物で大規模に行うことは実質的に不可能である。また、SSCP法等のPCR多型に基づく方法は、特殊で高額な器械や試薬を要したり、個々のマーカーについて充分な条件検討を行う必要があるなどの問題がある。そこで、簡便でかつ効率的なDNA多型の検出方法として、ヘテロ2本鎖形成による電気泳動時の移動度の変化を応用することとした。
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成果の内容・特徴 |
- 連鎖解析の親系統の支108号と大造間において、通常の電気泳動やPCR-RFLP法では多型が検出できなかったマーカーについて、両系統のPCR増幅産物を等量ずつ混合し、95℃で5分間変性させた後、55℃に15分間保温してヘテロ2本鎖を形成させた。これを室温に戻して1M尿素を添加したアガロースゲルで電気泳動して、元の産物との電気泳動時の移動度の変化を検索した。
- 多型のみられたものについて、F2個体を用いた通常のPCR反応後に同様の温度処理を付加して、当該マーカーについてホモ接合であるか、またはヘテロ接合であるかを判定した。ホモ接合体については、必要に応じて親の増幅産物との会合反応を行って、どちらの親の型かを判定した。多型が見いだされなかったものについては、さらにMDEゲル(FMC社)による電気泳動を行い、多型のあるものについて同様にF2連鎖解析を行った。
- 以上の結果、テロメア反復配列の隣接領域クローン8個、既知遺伝子3個、RAPDマーカー8個について、共優性分子マーカーとして新たにマッピングすることができた。
[具体的データ]
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成果の活用面・留意点 |
今後さらに既知遺伝子などの生物学的に意味のある配列のマッピングを行い、高密度・高精度な遺伝子発現地図を確立することにより、様々な形質や行動等の原因遺伝子を明らかにするなど、昆虫の高次生命現象を解明する上での貢献することが期待される。また、本法は他の生物にも応用可能であり、特に費用や労力の面で限界のある生物種においてゲノム解析を大きく進展させ得るものと考えられる。
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図表1 |
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カテゴリ |
温度処理
カイコ
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