タイトル |
昆虫起源セルラーゼの遺伝子構造 |
担当機関 |
蚕糸・昆虫農業技術研究所 |
研究期間 |
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研究担当者 |
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発行年度 |
1997 |
要約 |
昆虫(ヤマトシロアリ)由来の新規セルラーゼ(RsEG)のcDNAおよび遺伝子をクローニング・解読し、アミノ酸配列を決定した。また、本遺伝子が本種シロアリゲノム上に存在し唾液腺で発現していることを証明した。
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背景・ねらい |
食材性昆虫は、共生微生物に依存してセルロースを消化するという定説が長く一般に認知されてきたが、近年、昆虫自身もセルラーゼを生産していることを示唆する実験データが公表されている。担当研究者らはすでにヤマトシロアリのセルラーゼを精製し、免疫学的手法によりそれが唾液腺に蓄積されていることを明らかにしたが、この新規昆虫由来セルラーゼの一次構造および遺伝子構造を解明し、高等動物由来セルラーゼの存在をより直接的に証明するため、本セルラーゼのcDNAおよび遺伝子をクローニングする。
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成果の内容・特徴 |
- ヤマトシロアリ全虫体よりmRNAを抽出しcDNAを作成、ファージにクローニングした。それをヤマトシロアリセルラーゼ(RsEG)に対する抗体を用いてスクリーニングすることによりRsEG cDNAの部分配列を得た。またアンカーPCR法によってcDNAのすべてのアミノ酸コード領域をクローニングした。
- cDNAの配列よりさまざまな遺伝子特異的プライマーを作成し、イントロンを含むゲノム上のアミノ酸コード領域をクローニングした。その結果、平均長592bpの8本のイントロンを含む計6.1kbpの遺伝子がクローニングされた(図1)。
- RsEG cDNAをテンプレートとしてDIG PCRプローブを作成し、ヤマトシロアリゲノムDNAのサザンハイブリダイゼーションを行ったところ、ゲノム上に遺伝子配列より予想される長さの断片を含む遺伝子断片を検出し、RsEG遺伝子がヤマトシロアリゲノム上に存在することを証明した(図2)。
- cDNA特異的プライマーを用いたRT-PCRにより、本遺伝子が唾液腺で発現されていることが確認された(図3)。
- cDNA配列および翻訳アミノ酸配列より本酵素が活性ドメインのみからなるシングルドメイン構造をもち、セルラーゼファミリーEおよび炭水化物加水分解酵素ファミリー9に属する新規セルラーゼであることを解明した。
- 昆虫がゲノムにセルラーゼ遺伝子を持つことを初めて証明した。
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成果の活用面・留意点 |
研究で得られた知見は、今後、昆虫類を含む様々な無脊椎動物からの多様な新規セルラーゼの探索・クローニングに活用できる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
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