細菌Pseudomonas tolaasiiの病原性を制御する遺伝子

タイトル 細菌Pseudomonas tolaasiiの病原性を制御する遺伝子
担当機関 蚕糸・昆虫農業技術研究所
研究期間 1997~2000
研究担当者
発行年度 1997
要約 キノコに病気を起こす細菌Pseudomonas tolaasiiの病原性に関与する遺伝子を見出し、rtpA(required for tolaasin production and other pleiotropic traits)と命名した。rtpAは、外界シグナルの認識・応答を司る2成分制御調節遺伝子と高い相同性を示した。
背景・ねらい キノコの人工栽培で最も警戒されている病原細菌にPseudomonas tolaasiiがある。本細菌の病原主因は毒素tolaasinであり、この病原毒素がキノコを黄褐変させ商品的価値を著しく低下させる。そこで、本細菌の病原性機構を解明するため、非病原性(毒素非生産)変異株を作製し、病原性に関与する遺伝子の解析を行う。
成果の内容・特徴
  1. P.tolaasiiの病原性野生株を高温度で培養することにより、非病原性の自然突然変異株を得た。変異株は病原性の欠如と同時に、蛋白質分解酵素生産能の欠如、運動能の低下、増殖能の向上およびコロニー形態の変化が認められた(図1)。
  2. グラム陰性細菌の変異株作出等によく用いられるトランスポゾンmini Tn5km1を野生株に挿入することにより、自然突然変異株と同じ表現型の人為変異株を作製した。野生株の遺伝子ライブラリーを用いて、これら非病原性変異株の変異に関与する遺伝子をスクリーニングした結果、変異した全ての形質を野生株と同じ表現型へ同時に復帰させる遺伝子を見出した。
  3. 人為変異体のmini Tn5Km1挿入位置を解析した結果、本遺伝子に単一挿入されていることが確められ、本遺伝子が病原性を含む多面形質の発現に関与していることが確認された。そこで、本遺伝子をrtpA(required for tolaasin production and other pleiotropic traits)と命名した。rtpAを導入した変異株は全て病原性が復帰した(図2)。
  4. rtpAの塩基配列を解析したところ、2,751bpのORF(Open Reading Frame)が明らかになった。塩基配列に基づいて推定される遺伝子産物は917アミノ酸残基からなる100.6kDaの蛋白質で、百日咳病原細菌Bordetella Pertussisの病原性を制御する2成分制御調節因子BvgSの保存領域と高い相同性を持っていたK(図3)。2成分制御調節因子とは、外界シグナルを認識し、ターゲットとなる遺伝子の発現を制御する蛋白質であり、P.tolaasiiは生育環境などを認識して、病原性の発現を制御しているものと考えられた。
成果の活用面・留意点 細菌が持つ病原性制御機構の究明や、病原性発現を抑える遺伝子を組み込んだ形質転換微生物による生物的防除、耐病性キノコ作出への基礎的な資料となる。
図表1 227350-1.jpg
図表2 227350-2.jpg
図表3 227350-3.jpg
カテゴリ 病害虫 ICT 生物的防除

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