タイトル |
蟻蚕の分散性の評価法 |
担当機関 |
蚕糸・昆虫農業技術研究所 |
研究期間 |
1997~1998 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1997 |
要約 |
蟻蚕の分散行動は、ランダムな動きであり、拡散モデルにおける拡散係数を用いて評価できる。この係数により、蟻蚕の分散性について品種間差異が認められた。
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背景・ねらい |
カイコの幼虫の行動の解明は効率的な飼育技術の確立に不可欠と考えられる。しかし、カイコの行動に関するデータの蓄積は未だ不十分な状況にある。この一因として、カイコの行動に関するための適切な指数が見いだされていないことが考えられる。そこで、カイコの行動の中で最も基本的なものの一つである分散行動について、単純な環境条件下での蟻蚕の分散性を評価するための指数を検討する。
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成果の内容・特徴 |
- 25℃、暗条件での蟻蚕の分散過程を解析したところ、変位のバリアンスが時間に正比例すること(図1)、および、分散開始後15分の時点での個体の分布が拡散モデルからの予測と合致すること(図2)から、蟻蚕の分散行動はある一定の活発さでのランダムな動きであると結論できた。
- 蟻蚕の分散行動がランダムな動きであったことから、その活発さは拡散モデルにおける拡散係数を用いて評価することができる。拡散係数の推定法には、直線回帰式を利用する方法もあるが、「移動距離の2乗の平均値÷(4×時間)」という簡便な推定式が問題なく利用できることが確認された(表1)。
- 6品種2世代分の拡散係数につれて分散分析を行ったところ、品種間で有意差が認められ(P<0.05)、同一品種内の世代間には有意差が認められなかった(表1)。このことから、拡散係数は品種固有の分散性を表す指数として有効と考えられた。
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成果の活用面・留意点 |
- 拡散係数は均一な環境下において均一な個体で構成された集団間での分散性の比較に有効である。従って、小個体群で維持されてきた蚕品種間の比較、およびF1世代までの遺伝解析には利用可能と期待される。
- 内部が不均一な集団、あるいは不均一な環境下における分散行動の評価については、さらなる検討が必要である。特に、走性が現れるような場合には、分布の中心が移動するため、簡便式による拡散係数の推定はできない。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
カイコ
飼育技術
評価法
品種
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