タイトル |
カイコ卵への外来遺伝子の微量注射による形質転換体(トランスジェニックカイコ)の作出法 |
担当機関 |
フランス |
研究期間 |
1998~1998 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1998 |
要約 |
トランスポゾンの一種piggyBacにGFP(緑色蛍光タンパク質)遺伝子を挿入したベクターを発生初期のカイコ卵に微量注射し、次世代をスクリーニングすることによって形質転換体(トランスジェニックカイコ)を作出する方法を開発した。
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背景・ねらい |
昆虫の有効利用を図るためには、有用な外来遺伝子を導入し、新しい形質や機能をもつ昆虫を作り出す技術、すなわち形質転換体を作る技術を開発することが大切である。昆虫においても、形質転換体を作るために多くの研究が行われてきたが、これまでのところショウジョウバエやチチュウカイミバエ、カ等でこの技術が確立されているにすぎず、鱗翅目昆虫や農業に関係した昆虫ではまだ技術として確立されていない。特にカイコの場合、実用的に絹の生産に用いられており、人工飼料による大量飼育技術や生理生化学的研究、遺伝学的研究が進んでいるため、この技術の応用価値は高い。また、カイコは飛ぶことが出来ず、自然界では生存できないため、容易に形質転換体を隔離できることから、安全性が非常に高いという特徴がある。これらのことから、カイコにおいて形質転換体を作る技術を開発することが、強く要望されていた。
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成果の内容・特徴 |
- トランスポゾンpiggyBacにマーカーとしてGFPを挿入したベクター(図1)をヘルパーとともに注射し、約220蛾(約80,000頭)の次世代を得た。
- 蛍光実体顕微鏡により、220蛾の半分から孵化した約40,000頭の次世代幼虫をスクリーニングした結果、3蛾区からおよそ100頭の個体でGFPの発現が観察された(図3、図4)。
- GFPの発現が観察された個体からゲノムDNAを精製し、サザンブロッテイングにより調べた結果、GFPを発現している個体はゲノム当たり1~3コピーのGFP遺伝子が挿入されていることが分かった。
- ゲノムに挿入されたGFP遺伝子の構造を調べた結果、piggyBacの標的配列であるTTAAにこのトランスポゾンの末端逆位反復配列が挿入されていた。このことから、カイコヘの遺伝子の挿入は、トランスポゾンの転移機構を介して起きていることが分かった。
- 形質転換体をさらに交配して次の世代における分布を調べた結果、挿入された遺伝子はメンデルの法則に従って安定して次世代へ伝わった(図2)。
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成果の活用面・留意点 |
- 本研究によって確立されたカイコの形質転換体作出技術は、モデル昆虫としてのカイコの重要性を高めるとともに、基盤技術として遺伝子発現機構の研究や耐病性などを付与した新しい品種の作出、医薬品等の生産におけるバイオリアクター等としてに利用できると考えられる。
- このベクターをさらに改良することにより、害虫や天敵などへの遺伝子導入に応用しうるものと期待される。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
カイコ
害虫
飼育技術
品種
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