タイトル |
抗菌蛋白質カブトムシディフェンシンの蛋白質工学的改変 |
担当機関 |
蚕糸・昆虫農業技術研究所 |
研究期間 |
1998~2000 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1998 |
要約 |
アミノ酸が12残基より短いカブトムシディフェンシンの合成部分ペプチドは、一部が黄色ブドウ球菌、MRSA、大腸菌に対して抗菌活性を示した。活性があった部分ペプチドを改変し、さらに低分子量で抗菌スペクトルが広く、溶血活性のないペプチドを得た。
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背景・ねらい |
近年、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)等の薬剤耐性細菌の出現が医療の分野で大きな問題となっている。昆虫の抗菌性蛋白質は、細菌の細胞膜を破壊することにより抗菌作用を示すものが多く、従来の抗生物質が効かない薬剤耐性細菌にも効果があると考えられている。今回、昆虫由来の抗菌蛋白質の応用を目的として、カブトムシディフェンシンの部分ペプチドを合成し、構造と活性の相関から、活性部位を明らかにし、低分子量化による免疫源性の低減と、蛋白質工学的改変による抗菌活性の強化、抗菌スペクトルの拡張を行った。
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成果の内容・特徴 |
- カブトムシディフェンシン(アミノ酸43残基)のアミノ酸12残基からなる部分ペプチド64種類を合成し、黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性を測定したところ、LCAAHCLAIGRR-NH2(19L-30R-NH2)がディフェンシンの約20%の抗菌活性を示した(表1)。
- 19L-30R-NH2をもとにさらに短いペプチドを合成したところ、C末端側8残基のHCLAIGRR-NH2まで活性がみられた。19L-30R-NH2、9残基のAHCLAIGRR-NH2(22A-30R-NH2)およびそのアミノ酸を一部置換したペプチドの最小増殖阻止濃度(MIC)を測定したところ、いずれも黄色ブドウ球菌に対して、カブトムシディフェンシンに匹敵する活性を有していた(表1、2)。
- これらの改変ペプチドは、カブトムシディフェンシンが抗菌活性を示さない大腸菌に対しても活性を持ち、さらにMRSA、緑膿菌に対して活性を示すものも見られた(表1、2)。
- CDスペクトルの測定から、これらの改変ペプチドはリポソーム存在下でαヘリックス構造をとることが示され、リポソームからのグルコースの漏出実験から、細胞膜に作用することが示唆された。
- これらのペプチドは、ウサギ赤血球に対する溶血活性を示さなかった。
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成果の活用面・留意点 |
昆虫の抗菌性ペプチドを利用した、新たな医薬開発の可能性が示された。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
薬剤耐性
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