タイトル |
カイコの産生する抗菌性ペプチドがイネで発現 |
担当機関 |
蚕糸・昆虫農業技術研究所 |
研究期間 |
2000~2002 |
研究担当者 |
山川 稔
町井博明
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発行年度 |
2000 |
要約 |
カイコの産生する抗菌性ペプチド・セクロピンBの遺伝子を導入した形質転換イネは同ペプチドを効率的に分泌し、イネ白葉枯病菌やかさ枯病菌に対して強い抵抗性を示す。
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背景・ねらい |
最近、カイコ等の昆虫から抗菌性を有するペプチドが精製され、その遺伝子の構造が明らかにされるようになった。これらの抗菌性ペプチドの中には植物病原菌の活性を抑える作用のあるものも見いだされている。そこで、カイコから単離した抗菌性ペプチド・セクロピンBの植物における有用性を明らかにするため、その遺伝子をイネに導入し、得られた形質転換体の細菌病に対する抵抗性を調べた。
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成果の内容・特徴 |
- 導入ベクターとして、高発現プロモーターを有するベクターpBE7133(生物研大橋上席研究官より分譲)にセクロピンBを連結したもの(pRcec19-1)とpRcec19-1セクロピンBの上流に分泌型のキチナーゼ遺伝子(生物研西澤主任研究官より分譲)のシグナルペプチドを連結したもの(pRSPcec19-2)を構築した。
- この2 つの導入ベクターが組み込まれたアグロバクテリウムをイネのカルスに感染させ、カナマイシン耐性のカルス→シュート→幼植物体の選抜を経て、稔性のある完全な形質転換植物体を作出した。導入遺伝子の発現および耐病性検定は自殖後代(T1)で行った。
- ノーザンブロット法によりpRcec19-1、pRSPcec19-2場合ともに形質転換イネにおいてセクロピンB遺伝子が転写レベルで発現していることが確認された(図1)。
- ウェスタンブロット法では、pRSPcec19-2場合のみセクロピンBペプチドの発現が確認された(図2)。このことは、セクロピンは細胞内ではタンパク質分解酵素等により速やかに分解されることを意味しており、細胞外に分泌させることにより発現を検出できた。
- pRSPcec19-2 を導入した形質転換イネに白葉枯病菌を接種したところ、強い抵抗性を示した(図3)。しかし、pRcec19-1場合は、抵抗性を示さなかった。このことからも、発現ベクターを分泌型(pRSPcec19-2)にすることにより、抵抗性を示すに足るセクロピンが細胞外に分泌されていることが示唆された。さらに、pRSPcec19-2場合はイネかさ枯病菌に対しても抵抗性を示した。
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成果の活用面・留意点 |
得られた形質転換イネは白葉枯病とかさ枯病に強い抵抗性を示したが、他の細菌病や糸状菌等に対する抵抗性については未調査である。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
カイコ
抵抗性
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