14.標本を活用した水田希少植物宝庫の抽出とその立地特性の把握方法

タイトル 14.標本を活用した水田希少植物宝庫の抽出とその立地特性の把握方法
研究期間 2001~2003
研究担当者 松森堅治
石田憲治
飯嶋孝史
嶺田拓也
発行年度 2003
要約  植物標本の生育地データをGISに組み入れることにより、水田希少植物宝庫(ホットスポット)を抽出し、土地利用図や土壌分類図等とGIS上で重ね合わせその立地特性を把握することができる。
背景・ねらい  土地改良法の改正を受けて、農業農村整備事業においてさまざまな環境配慮が行われている。しかし、農村環境における水辺の生き物、特に植物に関しての情報やその生育地の立地特性についての事例や知見は不足している。
そこで、水田希少植物を対象に博物館収蔵の標本データとGISを活用して、「一定の努力でより多くの種を保全できる希少種の宝庫(ホットスポット)」を抽出する過程を明らかにすることにより、農業農村整備に有用な情報を提供することを目的とした。
成果の内容・特徴
  1.  水田希少植物の宝庫を抽出し、その立地特性を把握する過程を図1に示した。
  2.  標本の採取位置情報が3次メッシュ単位で整備されつつある栃木県で、水田環境下の生育記録があり、近年減少傾向の著しい31種の湿生希少植物を抽出した(表1)。栃木県立博物館に収蔵されている対象種の錯葉標本から、採取地名、3次メッシュコードなどをデータベース化したところ、希少植物の出現メッシュは栃木県内の全8,500メッシュのうち、計197となった。
  3.  3次メッシュ内の土地利用を国土数値情報(LO3-09M-09)から整理した(表2)。希少植物の採取地周辺は、水田環境タイプ(土地利用のうち水田が最も多い)、河川環境タイプ(堤外草地や河原などが多い)、谷津環境タイプ(森林率が高い)、に分けられ、希少植物の種群によって生育環境の特性が異なることが示された(図2)。
  4.  渡良瀬遊水地や鬼怒川沿いの水田地帯などの75メッシュでは希少植物が複数記録された(図3)。4種以上の希少植物が採取された25メッシュは、農村環境中における水田希少植物の宝庫と判断され(図3)、農業農村整備を進めて行く中で特に配慮を払わなければならない保全対象地としてとらえられた。また、宝庫の多くは土地利用から森林率が50%以上の谷津環境タイプに分類された(表2)。
  5.  国土数値情報の土地分類メッシュ(GO5-54M-48)の土壌分類項目からグライ反応を呈する土層をもつ湿性土壌を摘出し地形分類とあわせて、扇状地型、後背湿地型、谷津田型の各タイプの湿田環境を抽出した(図3)。希少植物の出現メッシュと重ねたところ、全出現メッシュの53%にあたる104メッシュが湿田環境を含み、湿田のタイプによって出現頻度が偏る種群が認められた(表3)。

成果の活用面・留意点
  1.  土地利用や湿田タイプによって生育特性の異なる水田希少植物のホットスポットは、環境に配慮した農業農村整備に向けた指標となりうる。
  2.  標本データを利用する際には、標本自体が持つ採取地域・年代の偏向性、採取位置やハビタット情報の欠如や不統一などに留意して、慎重に取り扱う必要がある





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図表2 227962-10.gif
図表3 227962-2.gif
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図表8 227962-7.gif
図表9 227962-8.gif
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カテゴリ 水田 データベース

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