旧ソ連における農業改革の比較分析による生産展開方向の把握

タイトル 旧ソ連における農業改革の比較分析による生産展開方向の把握
担当機関 国際政策部
研究期間 2000~2002
研究担当者
発行年度 2002
背景・ねらい 1991年末のソ連崩壊以降後、各国では独自の農業改革が展開され、いまや「旧ソ連=ロシア」という認識は過去のものとなりつつある。本課題では、旧ソ連諸国の農業改革を、ロシア以外の諸国をも対象として、その成果・問題点を比較分析する。このことによって、旧ソ連諸国のより正確な農業生産の動向把握、今後の展開方向を解明する。
以上を通じて、21世紀の世界の食料需給を考えるための知見、旧ソ連諸国に対するより適切な経済支援のありかたに関する知見を提供する。
12年度においては、ロシア以外の旧ソ連諸国における農業改革の成果および問題点に関して、基礎的な資料の収集・分析を行い、全体を概観した。13年度においては、従来の研究対象からはずれていたテーマ(加工・流通部門の改革等)を対象に研究を深化させた。14年度においては、全体のとりまとめを行った。
成果の内容・特徴
  1. CIS諸国における農業生産は、1990年代末にようやく下落を止め、回復の兆しが観察されるようになった(表参照)。このような契機となったのは全般的経済状況の好転であり、それをもたらしたのは、1998年8月のロシアにおける経済危機であった。ロシアにおける経済危機は、タイムラグをもちながら、ロシアだけではなく他のCIS諸国の通貨切り下げをもたらした。その結果、国内農業生産者の競争力が一時的に回復し、輸入代替が進行することになった。さらに、1999年以降には、石油・ガス等の原料の世界価格が上昇した。これは、原料輸出に依存するCIS諸国の経済を活性化させ、農産物需要の増加をもたらし、農業生産の回復を促進することになった。
  2. 10年にも及んだ農業改革は、極めて緩慢ながら、従来の問題を解決しつつある。例えば、上流部門と下流部門における「二重の独占」は弱まった。また、農業金融制度の整備に代表される農業支持政策が進展した。この結果、より正常な農業生産のための条件が整備され、農業の交易条件も改善をみせている。
  3. 1999年以降、農業生産は、全体として収益を生むようになってきた。ただし、国内生産物の輸入農産物・食料品に対する絶対的優位は失われ、単なる輸入代替を基礎とした生産回復の段階は終わりに近づいている。また、農産物・食料品輸入も再び増加に転じている。さらに、農業生産の回復を支えてきた好調な経済状況の要因は、畢竟、石油および天然ガスの国際価格の高騰でしかなく、極めて不安定なものでしかない。
  4. 全般的経済状況の好転といった外部要因のみに頼った農業生産の回復はありえず、生産技術・設備の現代化を通じた競争力の向上が必要とされている。CIS諸国における農業改革は、様々な欠点をもちながらも、ソフホーズ・コルホーズの再組織、土地関係の現代化、市場経済に対応した法制度および諸機構の整備といった点で一定の前進をもたらした。だが、生産技術・設備に関して言えば、1990年代を通じて投資は行われず、老巧化と陳腐化が進行した。同時に、CIS諸国の農業は、かつての連邦構成共和国間分業体制から否応なく国際分業体制へと組み込まれつつあり、この点からも生産技術・設備の現代化は強く要請されている。CIS諸国の農業の今後は、生産技術・設備の現代化により、国際競争力を向上できるかどうかに依存している。この過程は、着手されたばかりであり、当面の間、CIS諸国の農業生産は、経済動向と気象条件という外部要因により、大きな変動を繰り返すことであろう。
図表1 228517-1.jpg
カテゴリ 加工 輸出

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