農業由来の有機質資源の循環利用の促進に係る政策の評価手法の開発

タイトル 農業由来の有機質資源の循環利用の促進に係る政策の評価手法の開発
担当機関 評価・食料政策部
研究期間 2002~2003
研究担当者
発行年度 2003
背景・ねらい 本研究では,有機性資源のフローとそれに関わる環境負荷の発生量を把握できる勘定体系を提案し,宮崎県国富町を対象として地域における有機資源リサイクルシステムを構築することによる環境負荷低減効果を定量的に評価することを目的とする。
本研究で提案する新たな勘定体系は,有機性資源勘定と呼ばれ,産業連関表をベースとしたものである。有機性資源勘定は,特定地域での有機性資源フローを行列形式で表現し,さらに有機性資源が使用される諸活動において,どのような環境負荷がどのくらい発生するかを明示するものである。有機性資源勘定を推計することによって,特定地域における有機性資源フローが明示されるだけでなく,どのような環境対策を行うことによってどのくらいの環境負荷が削減されるかを予測できる。
有機性資源勘定の推計は宮崎県国富町を対象に行う。国富町では周辺4町で結成する事務組合でゴミ処理をしていたが,ゴミ処理施設の維持費の膨張問題と同時に,畜産経営農家による家畜ふん尿による土壌,水質の問題が深刻化した。そのため,生ゴミと家畜ふん尿を合わせてたい肥化する施設の建設が行われ,昭和60年に供用を開始した。
本研究において取り上げるのは,国富町内で行われるさまざまな生産活動のうち,たい肥センターを中心とした有機性資源のフローに関連する産業部門のみであり,具体的にはたい肥センター,耕種農業,畜産業および家計の4部門を取り上げる。また,それぞれの部門での活動に伴って発生する環境負荷については,二酸化炭素CO2,窒素酸化物NOx,硫黄酸化物SOxなど11項目である。環境負荷発生量は,原単位法により推計するが,家計部門の活動による環境負荷発生量は,推計に必要なデータが得られないため推計せず,耕種農業,畜産業,たい肥センターの3部門で推計した。
成果の内容・特徴
    推計された有機性資源勘定は表1に示す。平成14年度において,国富町では2,175トンの生ゴミと56,436トンの家畜ふん尿が発生した。そのうち,生ゴミ1,584トン,家畜ふん尿9,152トンがたい肥センターにたい肥の原料として搬入され,3,264トンのたい肥が生産された。その際,CO2が413.4トン,CH4が2.3トン,N2Oが184.2トン,NH3が7.9トン発生していることが示された。その他,耕種農業の生産活動からは,CO24,557.1トン,NOxが21.2トン,SOxが11.8トン,CH4が244.6トン発生し,畜産業の生産活動に伴って発生する8種類の環境負荷も明示されている。
    ここで,たい肥センター建設による環境負荷低減効果を明示化するため,仮に現在行われている1,584トンの生ゴミのたい肥センターへの投入が一切行われず,全て焼却処分された場合の環境負荷発生量との比較を行う。その結果,たい肥化した場合には,焼却処分の場合よりもCO2の発生量が403.9トン,N2Oが196.2トン減少することが示された(表2)。その他,焼却時に発生していた177.4トンのNOx,752.4トンのSOxは発生量がゼロになる。有機性資源の生ゴミは,カーボン・ニュートラルの性質を持つことから,たい肥化によるCO2の削減は地球温暖化防止に影響を与えない。だが,N2O,NOx,SOxについては,たい肥化による環境負荷の削減効果と認められ,たい肥センターの建設によるリサイクルシステムの構築により,一定の環境負荷低減効果があることが示された。
図表1 228521-1.jpg
図表2 228521-2.jpg
カテゴリ 環境対策 環境負荷低減 経営管理

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