タイトル |
食品安全性にかかわる比較制度・政策分析 |
担当機関 |
評価・食料政策部 |
研究期間 |
2002~2004 |
研究担当者 |
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発行年度 |
2003 |
背景・ねらい |
本研究では、食品の安全に関するリスクの未然防止、被害拡大防止策の観点から、欧米等諸外国の食品安全機関および関連団体の動き、表示、監視制度の改変動向を分析するとともに、食肉部門を中心として、安全性およびトレーサビリティに関する制度、政策について、日本と諸外国との比較を行い、トレーサビリティの程度および費用負担者-受益者関係の態様を明らかにする。
- 2003年11月、ドイツ北部ニーダーザクセン州、同南部バイエルン州にて、牛肉等のトレーサビリティ・システムの実態を調査した。
- 日本国内について、14年度に引き続き、県、事業体による牛肉トレーサビリティのシステム実施に際しての問題点を探った。とくに2003年12月の国の個体識別管理義務づけ以降の県、事業体による牛肉トレーサビリティ・システムの変化、検査体制について情報収集を行った。
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成果の内容・特徴 |
- EU、ドイツにおける牛肉トレーサビリティの動向
2004年2月の時点でEU15カ国域内のBSE確認数は通算187,276頭(うちイギリス183,170頭、OIE調べ)、ドイツでは294頭(2003年は54頭、ただし検査漏れ発覚のため精査中)である。ドイツの場合、2000年末に国産牛初の感染確認がなされ、牛肉消費はその直後大きく落ち込んだものの、現在ではBSE前の水準よりやや少ない程度まで戻っている。 EUでの牛肉トレーサビリティを安全性保証(義務的)と品質保証(任意的)の両側面から見ると、まず安全性保証については規則1760/2000により牛の個体識別と表示の義務づけがなされている。ドイツでは1999年9月より、一頭毎にその出生、移動、死亡、と畜に際して、家畜のデータベース管理を行う会社に届出をし、登録することが義務づけられている。データベース管理会社には州毎のものと全国規模のものがあり、データ更新、届出情報の内容チェックを行っている。この届出をEUの直接支払いの一つである雄牛奨励金の受給の条件とすることにより、届出の怠りを防いでいる。 また、品質保証はEUではフランスをはじめ、産地、飼育方法等による差別化、その表示の厳格化と相まって進められている。ドイツでの牛肉の品質保証は、北部の州では食肉会社の自主的取り組みに任されているのに対し、南部の州では州政府自らが地域食品マークの権利を所有し、品質面での差別化を図っている。たとえばバイエルン州で販売される牛肉の表示には、法律遵守レベルの安全性と品質を保証するQSマーク、同州で生産され、かつQSを上回るレベルであることを保証する地域食品マーク(GQ)、さらに全国展開のスーパーや食料品店のブランドがあり、生産者はそのどれか(複数も可)を選ぶことができる。地域食品表示GQの基準は2002年の改正を経て抗生物質の成長促進剤使用の禁止、処理場での背割りの禁止などの点で全国共通のQSより厳格化している。QSおよびGQの検査・認証は、州政府の委託を受けた民間の非営利機関が各関係者に対し年に一回行っている(図参照)。
- 日本の牛肉トレーサビリティ・システムの動向
日本におけるトレーサビリティも安全性保証、品質保証の両側面からとらえられる。2003年12月の国の個体識別管理義務づけ以降の牛肉トレーサビリティ・システムの変化、検査体制について、県、事業体の動きを追ったところ、(1)対象牛肉の範囲を県外産、県外移出分に拡げるとともに、農場から小売段階までの情報伝達、情報と商品の照合を機械化することにより効率化を図っている、(2)国の個体情報にはない情報(給餌・投薬内容等)を盛り込むことにより、品質保証の側面を強調している、(3)国のシステムとの連動、第三者認証が行われておらず、今後の課題とされている点などが明らかとなった。
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図表1 |
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カテゴリ |
機械化
データベース
肉牛
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