タイトル |
多様化する新規就農希望者に対応した研修制度の分析 |
担当機関 |
地域振興政策部 |
研究期間 |
2002~2003 |
研究担当者 |
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発行年度 |
2003 |
背景・ねらい |
近年における農外からの新規就農希望者の増加を背景に、営農技術を習得するための研修体制の整備が進んでいる。本研究では、多様化する就農希望者を類型化したうえで、各類型ごとの技術研修の実施状況を調査分析し、今後の研修制度のあり方について検討を行う。 平成14年度は、新規就農希望者を経営志向型と生活志向型に類型化し、全国アンケート調査を用いて経営志向型の技術研修の実施状況を分析した。平成15年度は、生活志向型を取り上げ、調査分析の整理や就農準備校等の関係機関への調査を実施し、農作業体験研修の取り組み内容を分析する。以上の分析を踏まえ、多様な就農希望者に応じた研修制度の枠組みを提示し、その推進のために必要な支援方策を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 生活志向型の農業研修の代表的なものは、1996年に開設した就農準備校である。2003年度で全10校が実施している66コースの内訳をみると、コース種別は入門コースが5割、受講期間は2週間以内が8割、受講料は3万円未満が7割である(第1表)。このことから、就農準備校の研修は、短期間・低コストの農業入門者向けという特徴を有することが分かる。その特徴は、受講生が延べ人数で約9千人を数えるものの、本研修を経て就農した者が345人にしか過ぎないことにも現れている。
- 一方、生活志向型の大多数は、必ずしも就農(農業経営)を目的としないが、獲得した技術・知識を何らかのかたちで生かそうというニーズがある。それを事業化したものが、1996年にスタートした東京都の援農ボランティア事業(青空塾)である。そこでは農業に関心を有する都民を対象にJAが農作業講座を実施し、認定を受けた者をボランティアとして農家が活用する(第1図)。1996~2003年度までに、援農ボランティア認定者数は970人、うち実際にボランティアとして活動をしている者は613人(活動率63%)を数え、都内126戸の農家に派遣されている。このように、直接就農に結びつかないものの、農業に貢献しうる層を生活志向型の中から確保する取り組みは、農業の担い手の裾野を広げるうえで重要である。近年ではさらに、NPO法人による農業ボランティアの養成・派遣が行われるなど、農業研修から農作業へ向かう動きが広がっている。
- 生活志向型を幅広く取り込みながら、経営志向型の養成も行う農業研修は、岡山県で先進的に実施されている。岡山県は、多様なニーズに対応して各種研修制度を設けているものの、将来的な就農への道も担保している。ここでは、農業体験研修(1993~2002年度実績:190人)→農業実務研修(同98人)→就農(同65人)へと至るルートがあり、3人に1人が就農を実現している(第2表)。このような段階的な就農は、就農者自身が探索コストを節約できるとともに、受け入れ側にとっても望ましい人材を絞り込むことが可能となる。農業研修を基軸に非農家が徐々に農業へ接近する岡山県の仕組みは、現代版のagricultural ladderとして評価できる。ただし、農業研修を実施できる市町村は、県下78市町村中、43市町村にとどまっており、研修生受け入れのパイが広がらないという問題が残されている。県・市町村が一体となった農業研修の実施が必要であるが、研修費助成の市町村負担分(10分の5~10分の8)が大きい。今後は、国の就農支援資金の活用や就農希望者の自己負担を求めるなど、研修費用の確保について検討する必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
経営管理
コスト
就農支援
低コスト
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