タイトル |
食品安全性とトレーサビリティに関する制度・政策の比較分析 |
担当機関 |
企画連絡室 |
研究期間 |
2002~2004 |
研究担当者 |
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発行年度 |
2004 |
背景・ねらい |
本研究では,食品の安全に関するリスクの未然防止,被害拡大防止策の観点から,欧米等諸外国の食品安全機関および関連団体の動き,表示,監視制度の改変動向を分析するとともに,食肉部門を中心として,安全性およびトレーサビリティに関する制度,政策について,日本と諸外国との比較を行い,トレーサビリティの程度および費用負担者-受益者関係の態様を明らかにする。
- アメリカの食品安全関係行政の動向について,農務省食品安全検査局および動植物衛生検査局を中心に,インターネットにより情報収集,分析を行った。
- 2003年11月のドイツでの実態調査およびインターネットによる情報収集により,EUおよびドイツの食肉トレーサビリティの制度と実態を把握した。
- 中国における食品の安全性およびトレーサビリティに関する制度,政策およびその影響について,現地調査等により分析した。
- BSE以降の食肉トレーサビリティに関する法律,組織の現状について,日本および諸外国の比較対照を行った。
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成果の内容・特徴 |
- アメリカの食肉トレーサビリティの動向
アメリカでは,2003年12月のBSE感染確認を契機に,2004年より農務省動物衛生検査局が全国動物個体識別システムNAISの導入を進めている。NAISでは,牧場,屠畜施設,家畜市場等の場所および動物に識別番号を付けて,連邦および州のデータベースに記録が保存される。牛の場合は,RFID耳標により,また豚の場合はロット単位でつけられたバーコードにより動物の移動情報が瞬時にして連邦および州のデータベースに送られ保存される。米国の上院では2004年3月にNAISの義務化を取り扱ったが,プライバシーおよび費用負担の問題により義務化に至っていない。
- EUの食肉トレーサビリティの制度と実態
トレーサビリティシステムは,義務的な部分と任意的なものに分けられる。義務的なトレーサビリティについては,EUの法律(1760/2000)に基づき加盟各国のデータバンクによる牛の個体情報把握がなされ,農場から食卓までの経路を通じたラベル表示が実現している。2004年からは豚のデータベースも構築されている。国など公の機関はデータバンク整備の初期投資を行い,データバンクの運営はその母体となる生産者支援団体の会費により賄われている。
- 中国における食肉トレーサビリティの現状
中国の食品安全制度は近年改善されているが,トレーサビリティはようやく開始されたところである。コールドチェーンの形成等を通じて豚肉の生産・輸送・販売面でのインテグレーションを行っている企業も見られるが,こうした一部先進的食肉加工企業の取組も地方政府の支援と密接な関係にある。
- 食肉トレーサビリティの制度・政策の国別比較
日本と諸外国のトレーサビリティに関する公共部門の補助・規制とその運用実態,食品業界の自主的取り組みについて,1)法的規制の内容,範囲,2)個体識別,ラベル表示,品質保証等,3)法律上,義務とされる範囲,4)対象となる食肉の範囲,5)国,地方,民間,生産者それぞれの費用負担,役割分担の5点について,比較検討を行った結果,日本の法的規制の内容,義務とされる範囲はEUとほぼ同じであるが,費用負担を国などの公共部門が行っている点,また,品質保証,偽装防止に莫大な予算を投じている点が異なる(表を参照)。なお,牛の個体識別制度はEU諸国のほか,オーストラリア,カナダ,ブラジル,アルゼンチン,メキシコ,ウルグアイ等にもある。
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図表1 |
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カテゴリ |
加工
データベース
豚
輸送
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