アマノリ類のプロトプラストへのレポーター遺伝子の導入

タイトル アマノリ類のプロトプラストへのレポーター遺伝子の導入
担当機関 西海区水産研究所
研究期間
研究担当者 岡内正典
水上 譲
発行年度 1994
要約 外来遺伝子の導入によりアマノリ類の優良品種を作成するための基礎的知見を得ることを目的に、先ず検出が容易なレポーター遺伝子をプロトプラストに導入する試験を行った。その結果、高等植物の遺伝子導入に利用されているプラスミドを用いてエレクトロポレーション法によりGUS(β-グルクロニダーゼ)遺伝子を導入したところ、一時的な発現が検出できた。海藻類への外来遺伝子の導入に成功した例は、本試験を含め3例しかない。
背景・ねらい 近年、アマノリ類の選抜育種技術が発達し、多くの品種が作出されてきたが、この育種法は長時間を要するのみならず、耐病性品種などの作出は困難である。そこで外来遺伝子を導入する新育種技術を開発することにより、より良い品種を効率的に作出することが期待される。ところが、海藻類に外来遺伝子を導入した例は皆無に等しく、ベクターの開発や遺伝子導入条件の検討といった基礎的知見を得る必要がある。本試験は、検出の容易なレポーター遺伝子を用いて、アマノリ類のプロトプラストへの遺伝子導入を試み、導入条件の検討及びその発現を確認した。
成果の内容・特徴
  1. アマノリのプロトプラストにレポーター遺伝子を導入するにはエレクトロポレーション法が適している。
  2. レポーター遺伝子としてGUS遺伝子が利用できる。アマノリの色素をメタノール処理により除去することでGUS遺伝子の発現を示す青色が検出し易くなる。
  3. 海藻類に適したベクターは開発されていないので、高等植物の遺伝子導入に用いられているEL2-Ω-GUS/pUC19(プロモーターとしてCaMV35S、エンハンサーとしてEL及びΩを有するプラスミド)を導入した。その結果、導入後2~5日間培養し2分裂を開始する前の細胞で一過性の発現が認められた。その他、種々のベクターを導入したが、発現が認められたものはなかった。
  4. この試験の結果からプロモーターとしてCaMV35Sプロモーター─エンハンサー配列が海藻にも利用できることがわかった。今後、遺伝子導入を行う際に極めて重要となるプロモーターにはこれを用いることが効果的であろう。
  5. 遺伝子導入が可能であるか否かは、プロトプラストの状態によって大きく異なる。少なくとも酵素処理はできる限り短期間で終了する必要があり、プロトプラスト作出後は0℃に近い低温条件下に置く必要がある。
  6. 今回、一過性の遺伝子発現は確認できたが、トランスジェニック植物体を得るには至らなかった。これは今回行った電気パルスの条件が極めて強く、プロトプラストが生育することが困難であったためとみられる。今後、アマノリの遺伝子導入により適した強力なベクターを開発し、弱い電気刺激でもベクターを導入することを検討する必要がある。
成果の活用面・留意点 この成果は、海藻類への遺伝子導入を行う上で必要となるベクターの開発研究に利用できる。また、EL2-Ω-GUS/pUC19に有用遺伝子を組み入れてプロトプラストへ導入することで新しい品種を作成できる可能性も高い。今後、アマノリの遺伝子組み換えのためのより適切なベクター系を作ることが必須である。
(図1、表1)
図表1 228936-1.gif
図表2 228936-2.gif
カテゴリ 育種 耐病性品種 品種

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