有機汚染指標生物の貧酸素・硫化水素耐性

タイトル 有機汚染指標生物の貧酸素・硫化水素耐性
担当機関 南西海区水産研究所
研究期間 1994~1997
研究担当者 玉井恭一
辻野 睦
発行年度 1994
要約 室内飼育実験で有機汚染指標として利用されている底生動物のシズクガイと線虫類、底生性コペポーダ類の貧酸素耐性等を明らかにし、指標生物としての有効性を向上させた。
背景・ねらい 底生動物は海域の有機汚染や底層水の貧酸素化に対する指標生物としてよく利用されているが、貧酸素化やそれに伴って発生する硫化水素に対する耐性はあまり知られておらず、海域環境指標としての適用には限界があった。そこで、室内実験によってこれらの耐性を明らかにし、環境指標としての底生動物の有効性を高めることを目的とした。
成果の内容・特徴
  1. 有機汚染指標として利用されている小型の二枚貝、シズクガイの貧酸素耐性を水温25℃で溶存酸素濃度を数段階に変えて検討した。無酸素では1日しか生存できないが、厳しい貧酸素条件(1ml/l、飽和度20%)では少なくとも4日間生存可能であり、さらに1.5ml/l(飽和度30%)以上なら、活発な摂餌活動がみられるなど、飽和時と同様の正常な行動パターンが観察された(図1)。すなわち、本種の貧酸素耐性はかなり高いことが実験的に示された。
  2. シズクガイの硫化水素耐性は低く、無酸素水に硫化水素を添加した実験では12μM程度の低濃度でも生存期間はさらに短縮された。
  3. 小型の底生動物のうち主要動物群である線虫類と底生性コペポーダには貧酸素耐性に違いがみられ、無酸素下では線虫類はコペポーダよりも貧酸素耐性が高かった(図2)。貧酸素海域で線虫類(Nematoda:N)とコペポーダ(Copepoda:C)の比(N/C)が高くなるのはこのためと考えられた。
成果の活用面・留意点
  1. 海域の有機汚染の指標生物としてのシズクガイや小型の底生動物の利用が、耐性面の裏付けをもって行えるので、従来より正確な環境評価が可能である。
  2. 生物指標のほかに水質や底質を考慮することによってより正確な評価ができるので、生物だけに頼らず、総合的に検討することが重要である。
図表1 228937-1.gif
図表2 228937-2.gif
カテゴリ シカ 評価法

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