タイトル |
トラフグにおける産卵場への回帰特性の実証 |
担当機関 |
南西海区水産研究所 |
研究期間 |
1994~1996 |
研究担当者 |
佐藤良三
柴田玲奈
小川泰樹
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発行年度 |
1994 |
要約 |
当研究室では、トラフグの生態的特性に関する知見を総合して“複数の系群が存在し、各系群が産卵場へ回帰する”という仮説を立て、親魚及び当歳魚の標識放流試験を行い、その仮説を実証した。
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背景・ねらい |
最近、トラフグの主漁場の東シナ海、瀬戸内海等では漁獲量が減少し、資源維持・増大のために有効な資源培養・管理の手だての必要性が唱えられているが、系群、回遊及び産卵場への回帰性に関する知見がなお不十分であり、早急な解明が望まれている。そこで、親魚及び当歳魚の標識放流試験を行い、回遊経路の推定及び産卵場への回帰性を実証した。
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成果の内容・特徴 |
- アイソザイム分析、漁業実態調査等から、“日本近海のトラフグには複数の系群が存在し、各系群は生まれ故郷の産卵場へ回帰する”という仮説を立てた。
- トラフグの産卵場の布刈瀬戸周辺海域で行った親魚及び当歳魚の標識放流試験の再捕記録を解析した。
- 当歳魚、親魚ともに西の海域へ移動し、数カ月後には五島灘、玄界灘或いは豊後水道、日向灘、鹿児島県沖で再捕され、これらの海域では他の海域からの回遊が報告されていることから、産卵場を異にする群の混合が推測された(図1)。
- 放流1年後の産卵時期に、5尾の親魚が放流地点の近海で再捕された(図1)。産卵時期に他の産卵場からの再捕報告がなく、再び同じ産卵場へ迷わず回帰したことが確認された。生殖腺の光顕写真により、再捕された雄親魚からは精子の形成を、雌親魚からは卵黄球期の第一次卵母細胞の成熟段階であったことを確認した。また、当歳魚人工種苗が1年半後の産卵期に体重2Kgで放流地点で再捕された。
- 以上のことから、布刈瀬戸生まれのトラフグは成長するに伴い外海域へ移動し、成熟すると生まれ故郷へ回帰してくることが実証された。
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成果の活用面・留意点 |
- 布刈瀬戸生まれのトラフグの回遊経路が明らかになり、各海域における漁獲規制等に役立つ知見が得られた。
- トラフグの産卵場への回帰性が検証されたことにより、産卵場の管理及び放流事業への方策が具体化できる。
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図表1 |
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カテゴリ |
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