タイトル |
過酸化水素による造礁サンゴの産卵誘発 |
担当機関 |
西海区水産研究所 |
研究期間 |
1997~1999 |
研究担当者 |
林原 毅
皆川恵
佐野元彦
玉城泉也
岩尾研二
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発行年度 |
1998 |
要約 |
過酸化水素を飼育水に添加することによって、サンゴ群集の中心的存在であるミドリイシ科サンゴの産卵誘発に成功した。この技術により、成熟したサンゴ群体から計画的かつ容易に配偶子を得ることができる。
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成果の内容・特徴 |
- 過酸化水素による産卵誘発試験を、ミドリイシ科2属9種(Acropora属及びMontipora属)、キクメイシ科3属3種、オオトゲサンゴ科1種、サザナミサンゴ科1種に対して行ったところ、ミドリイシ科9種において誘発効果が認められた。
- 過酸化水素の添加濃度は0.5~10mMで、処理時間は1~4時間で試験を行った。処理が強すぎると産卵前にへい死するため、標準的な処理方法としては、コリンボース状のAcropora属では2mMで3時間ないし5mMで2時間、テーブル状Acropora属及びMontipora属では2mMで2時間程度の処理が適当と考えられた(図1,図2)。
- 誘発による産卵時刻は、野外での自然産卵と同様に夜8時から11時の間であった。誘発処理を夜半から早朝に行った場合は当日の夜、午後から夜半までに処理した場合には翌日の夜に産卵することから、産卵開始は誘発処理からの経過時間ではなく、日没の暗くなる刺激によってコントロールされていることが判明した(図3)。
- 誘発処理によって産み出された配偶子の受精率は多くの場合に90%以上であった。未成熟群体への誘発処理では配偶子の放出は起こらず、成熟群体から得られた配偶子は、正常な発生過程を経てポリプへの変態が確認された。
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成果の活用面・留意点 |
本研究の成果は、産卵同調機構や受精機構及び幼生の着生機構の解明等、荒廃したサンゴ群集の回復を人為的に促進する技術の基礎となる研究に貢献できる。また、本技術により交配実験が行いやすくなるため、生殖隔離の観点から、混乱しているミドリイシ科の分類の再検討が進むものと期待される。産卵誘発は、成熟群体でのみ可能であるので、対象種の成熟・産卵パターンの事前調査が必要となる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
きく
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