タイトル |
有毒プランクトンのタネはどうやって発芽する? |
担当機関 |
独立行政法人水産総合研究センター瀬戸内海区水産研究所 |
研究期間 |
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研究担当者 |
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発行年度 |
2003 |
背景・ねらい |
ねらい・目的:
- 麻痺性貝毒が西日本各地で頻発し,水産物の出荷規制などにより貝類養殖業に深刻な影響が広がっており,その対策が急務である。
- 麻痺性貝毒を予測したり予防したりする方法を開発するため,その原因となるアレキサンドリウムについてシストの分布実態や休眠・発芽生理を明らかにすることを目的とする。
成果の特徴:
- シストを簡便に計数する方法を開発し,この方法を用いて西日本各地におけるシストの分布実態を調査した。その結果,瀬戸内海では広島湾と徳山湾でシストが高密度(泥1cm3当たりに1000個以上)に分布することを明らかにした(表1)。
- シストは形成直後には発芽せず,ある程度の内因性休眠(成熟期間)が必要であることが判った。この休眠期間は温度によって異なり,現場水温下では約6ヶ月であった。
- シストは成熟後も周囲の温度が高すぎると発芽できず,発芽に好適な温度範囲(7.5~17.5℃,最適温度12.5℃)があることが判った。
- シストは暗黒下でもある程度発芽したが,ごく少量の光照射により発芽が促進された。
- シストの発芽に有効な光波長は530~640nm(ほぼ緑色)にあり,これは現場海底付近の光波長とほぼ一致した。
- シストの発芽には2日以上の光照射が必要であった。
- シストはそれ自身に年周期性の体内時計を有しており,発芽のための特別の刺激がなくとも春から初夏に発芽しやすいようにプログラムされていることが判った。
- シストは発芽に好適な条件(温度,光)に置かれると約10日後に発芽した。また,発芽の約3日前から葉緑体由来の自家蛍光が観察されるようになった。
- 以上のように,シストは発芽に必要な幾つかの条件(休眠,温度,光,体内時計)を現場環境の変化に巧みに適応させていることが判った(図1)。
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成果の活用面・留意点 |
海底泥中のシストの分布や休眠・発芽条件が明らかとなったことにより,次のような課題の解明・解決をはかることが期待できる。
- 有毒プランクトン発生のタネ場の特定
- 毒化モニタリング海域の選定
- 当該海域における過去の有毒プランクトン出現の履歴把握
- 有毒プランクトンの分布域拡大機構の解明
- 未発生海域における潜在的な毒化可能性の把握。
また,シスト定量法は事業研修会等により普及活動も実施しており,道府県担当者の有毒プランクトン発生モニタリング技術の高度化に貢献している。
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図表1 |
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カテゴリ |
出荷調整
モニタリング
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