タイトル |
有害赤潮藻シャットネラ・オバータのタネ場を発見 |
担当機関 |
独立行政法人水産総合研究センター瀬戸内海区水産研究所 |
研究期間 |
2005~2005 |
研究担当者 |
坂本節子
山口峰生
板倉 茂
|
発行年度 |
2005 |
背景・ねらい |
2004年夏季に瀬戸内海のほぼ全域において有害ラフィド藻シャットネラ・オバータによる赤潮が発生し,深刻な漁業被害をもたらした。これまで,本種が主体となる赤潮や漁業被害の報告はなく,その増殖生理ならびに生態はほとんど不明であった。本研究では,広島湾を対象海域とし,その海底泥中におけるシャットネラ・オバータのシストの探索を行うとともに,その分布密度及び発芽温度特性を調べることを目的とした。
|
成果の内容・特徴 |
- シャットネラ・オバータのシストの発見
2005年6月に広島湾に設けた12定点において採泥調査を実施。葉緑体自家蛍光をもとにシストと思われる細胞を一個ずつ分離・培養し,発芽の有無を観察した。培養した約300細胞のうち10細胞からシャットネラ・オバータの栄養細胞(図1)が発芽し,シストの存在と形態が初めて明らかとなった。 - シストの形態的特徴
シストは大きさは約30μmの半球形で珪藻等の殻に付着。色は黄緑色から褐色で,内部に数個の褐色粒子あり。表面はなめらかで突起物なし(図1)。本種のシストの形態は従来のシャットネラ種と酷似し,両者の区別は困難。 - 広島湾におけるシストの分布状況(図2)
シャットネラ属のシストはほとんどすべての調査定点で確認されたが,シストの分布密度が高い水域は,広島市南方の西能美島の北部と西部に認められ,これらの海域がタネ場と考えられた。分布密度は泥1gあたり最大227個であった。 - シストの発芽に及ぼす温度の影響
シャットネラ・オバータのシストは20℃から30℃の間で発芽したが,17.5℃以下では発芽せず,従来のシャットネラ種に比べ発芽により高い温度が必要であった。
|
成果の活用面・留意点 |
シストの形態,分布及び発芽条件が明らかとなったことにより,次のような課題の解明を図ることが期待できる。
- 赤潮発生のタネ場の特定
- 赤潮モニタリング海域の選定
- 当該海域における過去の出現履歴の把握
- 未発生海域における潜在的な赤潮発生の可能性の把握
- シスト同定技術の研修
|
図表1 |
 |
図表2 |
 |
カテゴリ |
モニタリング
|