タイトル | 徳島県におけるアユ集団の遺伝的多様性と放流による遺伝的影響の解明 |
---|---|
担当機関 | 徳島県立農林水産総合技術支援センター水産研究所 |
研究期間 | 2000~2004 |
研究担当者 |
谷本 剛 |
発行年度 | 2005 |
背景・ねらい | 現在,全国の各河川において毎年大量の琵琶湖産・人工産の稚アユが放流されており,今後この様な大量放流により遺伝的にも生理・生態的にも異なる可能性をもつ集団が,移植された先で在来集団と交雑することによる遺伝的影響が懸念されている。このため本県では,これらアユ集団の遺伝的特性を把握すると共に,放流アユによる天然集団への遺伝的影響を解明することを目的とした。 |
成果の内容・特徴 | 【方法】 MS-DNAマーカーを用いた多型分析により海産アユ(吉野川,日和佐川,海部川)と放流アユ(琵琶湖産,徳島県人工産アユ2系統)の遺伝的特性を調べた。また,人工産アユのみ放流されている海部川を対象河川として,遺伝的特性についてモニタリングを継続すると共に,人工産アユ放流による遺伝的影響について検討した。 【結果】 2系統の人工産アユは,両系統とも海産,琵琶湖産アユと比較して遺伝的変異性が著しく低下していた(表1)。また,海産アユと放流アユとの間に大きな遺伝的分化が生じていた。 海部川の海産アユの遺伝的変異性は,毎年高水準で推移したことから,人工産アユが関与したことによる遺伝的劣化の傾向はみられず,遺伝的に健全な状態を維持していることが示唆された。一方,人工産アユは,継代数が増加するに従い遺伝的変異性が顕著に低下していくことから,近親交配が進行していることが示唆された(表2)。 海部川においては,産卵期における人工産アユの混獲率が1割程度であったこと,並びに海産アユと人工産アユのアリル型頻度の差異を基礎として,MS-DNAマーカーによる尤度分析をおこなったところ,分析したほぼ全ての個体は遺伝的に海産アユ型と判別された(図1)ことから,現時点において人工産アユが海産アユに与える遺伝的影響は低いものと考えられた。 |
成果の活用面・留意点 | 「アユの遺伝的多様性から見た放流指針」により,アユ資源の河川天然集団の遺伝的多様性を保全する観点から,望ましい放流のあり方について提案する。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
カテゴリ | DNAマーカー モニタリング |