タイトル |
南方系ホンダワラの出現に伴う海藻相の変化と同定に関する研究 |
担当機関 |
鹿児島県水産技術開発センター |
研究期間 |
2004~2005 |
研究担当者 |
田中敏博
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発行年度 |
2005 |
背景・ねらい |
近年,磯焼け地帯(図-1)において,これまで見られなかったホンダワラ属が確認され,所によっては藻場を形成するに至っている。このホンダワラ属は,熱帯,亜熱帯で見られる種が多く,温暖化などとの相関が考えられるとともに,波浪や食害に強いなどの特徴があるため,藻場造成対象種としての可能性が考えられる。
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成果の内容・特徴 |
- 薩摩半島南西部の笠沙町における定期藻場調査では,図-2に見られるとおり,2000年までは鹿児島県本土で見られる一般的な藻場構成であったが,2000年以降ではフタエヒイラギモクやマジリモク,シロコモクなど多くの南方系と思われる種が出現した。
- 不明種を含む新産ホンダワラ属の出現が相次いだため,「海藻同定ワークショップ」(第1回,第2回以後継続予定)を開催し種の同定と整理を行った。その結果,53種に分類され,うち21種については,新種又は新産種など現在の日本産ホンダワラ属分類表の中に含めるのは妥当ではない,と判断された。これらは一部を除いてほとんどが近年増加している南方系ホンダワラであった。
- 水産技術開発センターに所蔵されている約5,000枚の標本の中から,ホンダワラ属のみを取りだし,種ごとの最古標本作成年を調査した結果,図-3に見られるとおり1990~2000年を境に南方系種や不明種が出現していることが伺え,又,それらが確認されている海域は,磯焼け海域が多く,多くの種は藻場を構成している状態で確認されている。
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成果の活用面・留意点 |
- 南方系のホンダワラ属は,
- 波浪に強い
- 極浅海域から深部まで生育する
- 食害に強い
- 成熟期が長期にわたる
- 夏成熟が多い,
などの特徴を持つため,在来のホンダワラ属と併せた藻場造成対象種として期待される。(混成藻場づくり成功事例有り 図-4) - 海洋環境の変化等で増加(北上)していると考えられるこれらの種であるが,依然確認されていない海域においての安易な藻場造成は,種の多様性などの観点から慎重になるべきであり,注意が必要である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
亜熱帯
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