タイトル | オホーツク海沖合域での一次生産量の季節変動特性とリモートセンシング技術への応用 |
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担当機関 | 亜寒帯海洋環境部 |
研究期間 | 2006~2006 |
研究担当者 |
葛西広海 |
発行年度 | 2007 |
背景・ねらい | オホーツク海は冬季の一時期を海氷によって覆われるという特色を持つ、日本周辺でも独特な海域である。それゆえ地球温暖化の海氷への影響に伴い環境と生態系の急激な変化が危惧される海域の1つとして注目されている。しかし、ホタテガイ増養殖場として利用されている沿岸域では長期的なモニタリング調査により海域の生物生産力の評価が行われているものの、沖合域ではほとんど行われてこなかった。本研究では2000年以降行ってきたオホーツク海沖合域での海洋観測データを解析し、一次生産の季節変動の特性を明らかにするとともに、今後衛星リモートセンシングを用いた低次生産力の評価の精度を高めるための検証を行った。 |
成果の内容・特徴 | (1)オホーツク海沖合域(図1の定点N2-N4とS3-S4)における春季-秋季の植物プランクトン現存量(クロロフィル濃度)の鉛直分布(図2)から、クロロフィルの高濃度層は4月に表層でみられ、植物プランクトンの春季ブルーミング現象を示すものの、夏季以降20m深付近に移り亜表層極大を示した。(2)一次生産量もクロロフィル濃度と同じく春季に表層で高い値を示し、また夏季-秋季にはその亜表層極大と対応した鉛直分布を示した。(3)一次生産量の季節変動は親潮水域と比べて小さく、調査期間を通じて安定(約400 mgC/m2/day)して推移する特徴を示した(図3)。(4)衛星リモートセンシング手法で測定可能な表層クロロフィル濃度、表面水温、日射量から1日当たりの一次生産量を推定するための計算式(アルゴリズム)を用いて求めた一次生産量の推定値と実測値を比較したところ、表層ではよく一致した(図4)。 |
成果の活用面・留意点 | (1)オホーツク海沖合域は春季-秋季にかけて安定した一次生産力を持っていることが明らかとなり、沿岸漁場における沖合域からの有機物等の供給機構を解明するための基礎的知見となる。(2)一次生産量推定アルゴリズムは水柱全体ではやや過大評価の傾向を示し、精度向上に向けて改良の余地があるが、海氷域生態系への温暖化の影響を広域的に評価するためのモニタリング手法として有効である。(3)今後は結氷期間とその前後を含む周年にわたる生産力の評価が必要であり、そのため沿岸域の連続モニタリングと連携した観測態勢の整備が喫緊の課題である。 |
図表1 | |
図表2 | |
図表3 | |
図表4 | |
カテゴリ | 季節変動 モニタリング リモートセンシング |