岩手県沖合海域における長期的な水温低下傾向

タイトル 岩手県沖合海域における長期的な水温低下傾向
担当機関 岩手県水産技術センター
研究期間 2008~2010
研究担当者 小川 元(岩手県水産技術センター)
発行年度 2008
背景・ねらい
 地球温暖化による影響は海域により異なる現象として現れるとの指摘があることから、岩手県海域において水温の上昇傾向があるかどうかを確かめるため、漁業指導調査船「岩手丸」を用いて実施している定線海洋観測結果から、岩手県地先の長期的な水温変動傾向を明らかにすることを目的とした。
成果の内容・特徴 漁業指導調査船「岩手丸」で実施している定線海洋観測(図1)の結果のうち、1966年1月から2007年12月までの42年間の海表面および水深100m層の水温から年偏差を算出した。周期的な変動は認められないことから(図2)、水温の年偏差と年(1966年から起算)の一次回帰分析を行なった。

(1)海表面の水温変動傾向
海表面水温の一次回帰分析結果を表1に示す。沖合の観測点のほとんど(黒埼定線の30~50海里、トドヶ埼定線の20~50海里、尾埼定線の20~50海里、椿島定線の20及び50海里の13観測点)で42年間に0.99~1.94℃の水温低下傾向が認められた(P 0.1)。一方、陸岸寄りの観測点(黒埼定線の0~20海里、トドヶ埼定線の0~10海里、尾埼定線の0~10海里、椿島定線の0~10海里および30~40海里の15観測点)では長期的な上昇または低下傾向は認められなかった(P>0.1)。

(2)水深100m層の水温変動傾向
水深100m層の一次回帰分析結果を表2に示す。沖側の観測点(黒埼定線の20~50海里、トドヶ埼定線の5~50海里、尾埼定線の20~50海里、椿島定線の20~50海里の18観測点)で42年間に0.96~3.51℃の水温低下傾向が認められた(P0.1)。一方、陸岸寄りの観測点(黒埼定線の5~10海里、尾埼定線と椿島定線の5~10海里の6観測点)では長期的な上昇または低下傾向は認められなかった(P>0.1)。

海表面及び水深100m層ともに沖合の観測点で長期的な水温の低下傾向が認められたのに対して、陸岸寄りの観測点でその傾向が認められなかったことは、それぞれの海域の変動が異なる要因、例えば、沖合では親潮第一分枝、沿岸では津軽暖流によってもたらされていることを示唆している。
成果の活用面・留意点
今回検出された沖側の観測点における水温低下傾向が地球温暖化進行の途中経過であることも考えられることから、定線観測を継続して実施し本県海域における地球温暖化の進行状況を見守ることとする。

図表1 230105-1.pdf
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