タイトル |
大区画圃場保有大規模稲作農家の春作業構造 |
担当機関 |
宮城県農業センター |
研究期間 |
1994~1995 |
研究担当者 |
|
発行年度 |
1994 |
要約 |
大規模稲作農家では、代掻・移植の春作業を克服するため、圃場条件の整備による一区画面積の拡大や的確な雇用導入による作業体制の編成等により効率的な作業を進めているが、期間中は長時間連続労働となっている
|
背景・ねらい |
大区画圃場整備事業により一区画面積が1haを超える圃場整備が推進されているが、 大規模稲作志向農家では、小区画・分散圃場をも抱き込みながら規模拡大に 取り組んでいる。そこで、現在、大区画圃場を保有している大規模稲作農家の 現状について、特に規模拡大の難しい春作業(代掻・移植、以下「春作業」)に 視点をあて、その作業構造の特徴を明らかにする。
|
成果の内容・特徴 |
- 事例の位置づけ
調査農家は仙台平野の中央部鹿島台町にあり、借地や受託作業による 規模拡大に意欲的に取り組み、水稲春作業面積1,262a(自作地312a、借地780a、 全面受託40a、作業受託130a)を実施しているが、 圃場は小区画・分散錯圃の状況にあり、 本県の典型的な大規模稲作農家である。
- 経営の特徴
稲作部門の他に複合部門として葉たばこ70aを栽培している。 葉たばこの定植作業(4月中・下旬)とマルチ除去作業(5月下旬)との労力競合回避と 水稲の適期移植のため、自家労働力2人(経営者と妻)に加え、 雇用2人(男女各1人)を導入して作業の効率化を図っている。
- 調査農家の春作業の特徴として次の点が上げられる。
- 圃場の状況を見ると、圃場枚数は18団地38枚であり、
その分散状況は、県内他大規模稲作農家(以下「他農家」という)と大差はない。 しかし、一区画当たりの平均面積は33.2aで他農家の20aに対し、 13a程広い。これは、圃場整備事業への積極的取り組みや借地を含めた畦畔除去に 自主的に取り組んだ成果でもある。
- 代掻オペレータに雇用男子を導入することによって、
経営主が移植作業に専念できる作業体制を作る一方、苗運搬・移植補助作業の雇用女子 も導入して移植作業の効率化を図っている。
- 圃場の作業順序は、おおむね自宅からの距離の近い順となってる。これは、自作地
以外に占める借地・全面受託の割合が86%と高いため、 作業順序のの組立が自己判断できることと、 作業効率を高めたいとする意識が働いているものと考える。
- 10a当たりの田植作業時間は2時間で、生産費調査の平成5年宮城県値5.1時間の
約40%であり、省力化はかなり進んでいる。しかし、田植機の圃場作業量41.4a/時間 から、移植作業は30.5時間で終了すると試算されるが、実際は 8日間延べ71時間を要しており、圃場分散による移動時間や小区画圃場が省力化の 障害となっている。
- 経営主は、代掻から移植まで15日間の連続労働(1日平均10.1時間)、
妻はこの間14日間の作業を実施、移植開始後8日間は1日平均約9時間従事しており、 長時間労働の状況にある。また、労働強度を表すエネルギー代謝率をみると、 苗の運搬、植付補助の値が概して高い。 この補助作業は、一般的に女性によって担われることが多いが、 その労働消費エネルギーは高く、労働が厳しい状況にある。
表1 大規模稲作農家の圃場分散 表2 大規模稲作農家の区画面積別圃場数 表3 大規模稲作農家の春作業の作業の内容・時間及び圃場順序 表4 田植作業の消費エネルギー
|
成果の活用面・留意点 |
以上の特徴は、特定農家の作業構造であるが、大規模志向農家は小区画分散錯圃の 圃場条件や春作業への雇用導入の検討等抱える問題点は共通しており、 その課題解決へ活用が考えられる。
|
図表1 |
|
図表2 |
|
図表3 |
|
カテゴリ |
規模拡大
経営管理
栽培技術
省力化
水稲
たばこ
春作
マルチ除去
|