タイトル |
複合交信攪乱法によるモモ害虫同時防除 |
担当機関 |
福島県果樹試験場 |
研究期間 |
1997~2000 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1998 |
要約 |
モモシンクイガ、ナシヒメシンクイ、ハマキムシ類およひモモハモグリガを対象としたモモ用複合交信攪乱剤を用いることにより、殺虫剤使用を削減できる。
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背景・ねらい |
環境に優しい農業の推進は近年の急務の課題であり、 果樹栽培においては殺虫剤の散布削減が可能となれば、 環境に優しい農業の実践技術となる。交信攪乱法は、 交信撹乱剤の処理によって対象害虫の交尾を阻害し、産卵数が減少し、 次世代の寄生密度を下げて被害を軽減する方法である。 複合交信撹乱剤の利用により、殺虫剤の散布を削減するため、 複合交信撹乱剤の有効利用方法と、殺虫剤の削減時期を検討する。
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成果の内容・特徴 |
- モモ主要害虫用の複合交信撹乱剤は、
ハマキムシ類の越冬世代成虫が羽化する前まで(福島県北地方では5月15日頃)に、 10a当たり150本の割合で目通りの高さの枝に設置する。ほ場周辺部では フェロモン濃度が低くなりやすいので、 幅5m程度にわたって通常の3倍量を設置し補強する。
- モモシンクイガおよびナシヒメシンクイの発生密度の低いほ場では、
これらに有効な殺虫剤を削減しても被害は発生しない( 図1、 図2)。 したがって、発生密度の低い条件下では、 7月中旬の補完的な防除薬剤の散布で十分な防除効果が得られる。 ハマキムシ類に対しては、交信攪乱処理による効果が不安定で、 補完防除を実施しなかった試験開始当初には果実被害が多数発生する場合があり (図3)、防除適期の薬剤散布が必要である。
- モモハモグリガは多発条件下では交信攪乱効果が十分ではなく、
葉の被害も発生するため(図4)、 第2世代幼虫期防除(6月上旬)に加え、多発条件下では7月下旬にも防除する。 このため、交信攪乱処理ほ場以外での発生に特に注意し、 第3世代以降は発生状況を見て補完防除を実施する。
- 殺虫剤は、ほ場条件によって最大50%まで散布回数削減が可能であり、
天敵に影響の少ない殺虫剤を使用することで、 カブリダニ類の保護効果により殺ダニ剤の散布の必要がなくなる。
- 傾斜地では上辺部を中心に複合交信攪乱剤の20%追加処理、
孤立園地及び小規模園地では周辺部への20%追加処理と簿風ネットの設置により、 ほ場条件が異なっても複合交信攪乱剤の害虫防除効果が比較的安定する。 表1 防除体系現地試験農薬散布実績
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成果の活用面・留意点 |
- 交信攪乱法の防除効果は処理面積が大きいほど安定するため、
できるだけ地域全体で実施する。少なくとも4ha以上まとまった面積で実施する。 交信攪乱処理下で殺虫剤の散布を削減する場合には、 他の害虫の発生に十分注意する。
- 傾斜地・周辺部等フェロモンが流亡しやすいほ場では防除効果が不安定なため、
使用する場合には殺虫剤の削減を控えたり、防風対策等が必要である。
- 1,2年の結果にとらわれず、連年処理と処理面積の拡大が必須である。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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カテゴリ |
病害虫
害虫
傾斜地
農薬
フェロモン
防除
もも
薬剤
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