タイトル |
「幸水」に異常落葉を引き起こすCalletotrichum acutatumによるナシの炭疽病の発生 |
担当機関 |
秋田県果樹試験場 |
研究期間 |
2000~2000 |
研究担当者 |
高橋 功
深谷雅子
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発行年度 |
2000 |
要約 |
ナシ炭疽病は、既知の病原菌Colletotrichum gloeosporioidesとは異なるC.a-cutatumによっても発病し、特に「幸水」に早期落葉を引き起こす。
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背景・ねらい |
1998年8月下旬に秋田県男鹿市のナシ「幸水」に葉枯れ症状が発生し、早期落葉を引き起こした。本症状は果そう葉ごとに見られ、症状が重い場合は結果枝の葉が全て褐変し、果実品質に多大な影響を及ぼすものである。そこで本症状の発生原因を明らかにし、防除法確立の資料とする。
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成果の内容・特徴 |
- 病徴:葉の中肋部分に灰褐色不整形の大型病斑を形成し、病斑上にはやがて鮭肉色の小粒を多数生じる。褐変症状は主に果そう葉ごとに見られ、病斑が拡大して葉全面に及ぶと落葉する。
- 分離菌のPDA培地での性状は、菌叢が白色~灰白色を呈し、やがて鮭肉色の分生子粘塊を密生する。分生子は先端がやや尖った円筒形または紡錘形で、大きさは平均15.3μm×5.3μmであり、炭疽病菌であることが明らかになった(図1)。
- 分離された炭疽病菌のナシ葉への接種により、病徴が再現された(表1)。
- 分離された炭疽病菌に対するベノミル剤およびジエトフェンカルブ剤の菌叢生育抑制率は低く、本菌はこれらの薬剤に低感受性を示した(表2)。
- 種特異的プライマーを用いて炭疽病菌のrDNAのPCR増幅を行った結果、C.acu-tatum特異プライマーの組み合わせでは、490bpのポジィティブバンドが生じたが、C.gloeosporioides特異プライマーの組み合わせでは、このバンドは生じず、本菌はC.acutatumであることが確認された。
- 本病に対し有効な薬剤を検索した結果、アゾキシストロビン剤、キャプタン剤の効果が認められた(表3)。
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成果の活用面・留意点 |
- ナシ炭疽病菌(C.acutatum)の各品種に対する病原性を明らかにする必要がある。
- 本病に対しては、アゾキシストロビン剤やキャプタン剤が有効であるが、両剤ともに本病に未登録のため、普及するには登録を取得する必要がある。
- 本病は雨媒伝染性であるので、6~7月に多雨の年は発生に注意する。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
病害虫
炭疽病
品種
防除
薬剤
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