タイトル | 低栄養状態の黒毛和種は脂質動員能を高めることで栄養素を乳腺に配分する |
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担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 東北農業研究センター |
研究期間 | 2001~2004 |
研究担当者 |
新宮博行 櫛引史郎 篠田満 嶝野英子 押部明徳 |
発行年度 | 2005 |
要約 | 低栄養状態の黒毛和種は高栄養状態に比べ乳量が22%低いが、体組織から脂質動員を促進させ栄養素を乳腺に配分する。増乳効果を示す血漿成長ホルモン濃度は栄養状態に影響を受けないが、末梢組織で栄養素取込を促進するインスリン濃度は低栄養状態の方が低い。 |
キーワード | 肉用牛、泌乳、栄養水準、乳量、インスリン、脂質動員 |
背景・ねらい | 東北地方の豊富な草資源を最大限活用した肉用牛生産は低コストを図る上で極めて重要である。しかし、肉用牛の放牧は低栄養状態に陥りやすい傾向にあることに加え、肉用牛の中でも特に黒毛和種は乳量が極端に少ないため、低栄養状態に陥った場合、子牛に与える乳量は更に減少する可能性がある。これまでのところ、黒毛和種泌乳牛を適正な栄養水準で飼養した場合の泌乳機能と泌乳に関連する内分泌機能の関係については明らかにしたが、低栄養水準下における泌乳機能と内分泌機能の関係については不明である。 そこで、低栄養状態にある黒毛和種の乳量や血中のホルモン及び代謝産物濃度を高栄養状態時と比較することにより、低栄養水準と泌乳及び内分泌機能との関係を明らかにする。 |
成果の内容・特徴 | 1. 黒毛和種経産雌牛10頭を分娩前2ヶ月から分娩後5日まで日本飼養標準(肉用牛1995年版)に従って飼料を給与した後、ME水準を130%、DCP水準を150-170%とした高栄養飼料区と、ME水準を80%、DCP水準を90-110%とした低栄養飼料区を設け、試験用飼料に切り替える馴致の直前の乳量を100%とした場合、馴致の最後1週間(分娩後29-35日)の低栄養飼料区の平均乳量は高栄養飼料区に比べ22%低い(図1)。 2. 増乳効果に関連する血漿成長ホルモン(GH)及びインスリン様成長因子-1(IGF-1)の濃度は区間で類似するが、末梢組織で栄養素取込を促進するインスリン(INS)濃度は低栄養飼料区の方が低い(表1)。 3. 血漿グルコース(GLU)濃度は区間で大きな差異を認めないが、脂質動員能の指標である遊離脂肪酸(NEFA)の濃度は低栄養飼料区の方が高い(表1)。 4. 尿素態窒素(BUN)は一部、乳蛋白質の原料として利用されるため、血漿BUN濃度は低栄養飼料区の方が高い(表1)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 本成果は、黒毛和種(肉用種)泌乳牛の乳量、並びに泌乳に関連する血中のホルモン及び代謝産物濃度が栄養水準により影響を受けることを示す基礎データとして活用できる。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
カテゴリ | 低コスト 肉牛 乳牛 |