タイトル | チャ寄生クワシロカイガラムシ第1世代幼虫のふ化盛期の予測 |
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担当機関 | (独)農業技術研究機構 野菜茶業研究所 |
研究期間 | 1998~2002 |
研究担当者 |
武田光能 |
発行年度 | 2001 |
要約 | クワシロカイガラムシ越冬世代雌成虫の生殖休眠は冬至頃まで維持される。発育零点を10.5度、起算日を1月1日とすれば、越冬世代雌成虫の半数が産卵する時期は150日度、第1世代幼虫ふ化盛期は287日度の有効積算温度となる。 |
キーワード | クワシロカイガラムシ、生殖休眠、チャ、有効積算温度、防除適期 |
背景・ねらい | チャに寄生するクワシロカイガラムシの防除には多量の薬剤散布が必要であり、その防除適期は幼虫のふ化盛期後の数日間に限定されている。そのため、ふ化盛期を把握して適期に薬剤を施用する必要がある。幼虫ふ化盛期の把握法として、寄生枝の雌介殻内のふ化状況を調査する方法と茶株内に設置した粘着トラップの幼虫捕獲数のピークを調査する方法が確立されている。しかし、調査の開始時期やふ化盛期を調査期間内に判定することは困難であるため、有効積算温度を利用して第1世代幼虫のふ化盛期を把握する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 冬至までに採集したクワシロカイガラムシ越冬世代雌成虫は好適な温度条件下でも卵巣卵が発育せず、生殖休眠が維持されている。冬至に採集した越冬世代雌成虫の半数は産卵を開始するが、半数の休眠は維持される。これに対して、年明け後に採集した雌成虫の卵巣卵は速やかに発育する(図1)。 2. 休眠が覚醒された雌成虫の50%が産卵するまでの発育零点は10.5度(9.5~11.2度)であり、季節の進行にしたがって有効積算温度は低下する(表1)。越冬世代雌成虫の50%が産卵した時期から50%ふ化卵塊率(雌介殻内に産卵された卵の半数以上がふ化した状態)が半数となるまでの発育零点は10.4度、有効積算温度は133日度である。 3. 発育零点を10.5度、起算日を1月1日として、1998年から2001年の産卵・ふ化状況(静岡県金谷町)を解析した(図2)。越冬世代雌成虫の50%が産卵する時期とふ化盛期には2週間の年次変動がみられたが、50%の個体が産卵する時期の有効積算温度は150日度、第1世代幼虫ふ化盛期の有効積算温度は287日度である。ふ化盛期頃の日当たり有効積算温度は8.6日度(6.7~10.4日度)であり、ふ化盛期頃の29mm(1999年)の降雨はふ化を遅延させたが、6mm以下の降雨の影響はみられなかった。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 平坦地の成木園では、50%ふ化卵塊率が半数となる時期(平均287日度)の翌日から4日間程度(50%ふ化卵塊率が60~80%の時期)が防除適期となる。 2. 雌介殻内の卵のふ化状況によって防除適期を把握する場合、有効積算温度が280日度に達した時期に茶枝を採集してふ化状況を調査する。 3. 茶株内に粘着トラップを設置してふ化盛期を把握する場合、有効積算温度が250日度に達した時期(50%ふ化卵塊初期)に粘着トラップの設置を行う。調査間隔を1日置きとすれば3~4回の調査でふ化盛期を把握できる。粘着トラップによるふ化盛期の2日後~5日後が防除適期である。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
カテゴリ | 病害虫 茶 防除 薬剤 |