高病原性鳥インフルエンザウイルスの鶏病原性はマクロファージ細胞等でのウイルス増殖力に起因する

タイトル 高病原性鳥インフルエンザウイルスの鶏病原性はマクロファージ細胞等でのウイルス増殖力に起因する
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所
研究期間 2006~2009
研究担当者 塚本健司
鈴木耕太郎
多田達哉
真瀬昌司
岡田浩尚
伊藤寿浩
発行年度 2009
要約 アジアを中心に流行が続いている、病原性が極めて高いH5N1亜型の高病原性鳥インフルエンザウイルスは、マクロファージ細胞と血管内皮細胞で急速に且つ高力価で増殖して、発熱と自然免疫の誘導を阻害しながら、鶏を短時間に死亡させるウイルスである。
キーワード 鳥インフルエンザ、病原性、病態変化、発熱、自然免疫、サイトカイン
背景・ねらい 1997年以降、アジアを中心に養鶏業に甚大な被害をもたらしているH5N1亜型の高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)ウイルスは、HPAIウイルスの中でも病原性が極めて高いことで知られているが、その特徴は十分に解析されていなかった。そこで、その特徴を明らかにするために、無線体温センサを装着させた鶏にアジアを中心に流行しているH5N1亜型のHPAIウイルスと従来型の病原性を有するHPAIウイルスを接種して、発熱、死亡時間を正確に調べると共に、体内におけるウイルス増殖、病理組織変化、自然免疫応答に重要な各種サイトカイン遺伝子の発現を分析し、両者を比較する。
成果の内容・特徴
  1. 病原性が極めて高いA/chicken/Yamaguchi/7/2004(H5N1)(以下、CkYM7と略す。)に感染した鶏は、発熱(0.6℃上昇)・病変・症状も認められず、極めて短時間(34時間)に死亡する(図1)。一方、従来型の高病原性株A/duck/Yokohama/aq-10/2003(H5N1)(以下、DkYK10と略す。)に感染した鶏は、高熱(2.4℃上昇)、強い症状と病変を伴い、3日以上(87時間)経ってから死亡する。またCkYM7では、感染最小量を接種した場合でも、死亡時間(58時間)は延長するが、発熱は見られない。
  2. DkYK10はマクロファージ系細胞の一部でウイルス抗原が検出されるのに対して、CkYM7はマクロファージ系細胞と血管内皮細胞に多くのウイルス抗原が検出され(図2)、マクロファージ系細胞に強いアポトーシスが観察される。
  3. CkYM7の肺での増殖はDkYK10に比べて急速で、増殖価も高い(図3)。
  4. 自然免疫や発熱に重要な役割を果たすサイトカインの多くは、マクロファージ系細胞と血管内皮細胞で生産される。これらの細胞と高い親和性を有するCkYM7に感染した鶏の肺では、各種サイトカイン遺伝子の強い発現が接種24時間後に見られ、その後(接種32時間)急速に低下するが、DkYK10では半減する程度で持続する(図4)。
  5. CkYM7感染鶏では発熱がほとんどみられず、死亡直前にサイトカイン遺伝子の急激な発現低下が起こる理由として、マクロファージ系細胞の強いアポトーシスが関係していると考えられる。
  6. アジアを中心に流行が続いている、病原性が極めて高いH5N1亜型のHPAIウイルスは、マクロファージ細胞と血管内皮細胞で急速且つ高力価で増殖する結果、発熱と自然免疫を強く障害しながら、鶏を短時間で死亡させる特徴を有する。
成果の活用面・留意点
  1. 肉眼等の病変がなくても、短時間に鶏を死亡させるHPAIウイルスは鶏病原性が極めて高いので、できるだけ早期の病性鑑定と防疫措置が求められる。
図表1 233949-1.png
図表2 233949-2.png
図表3 233949-3.png
図表4 233949-4.png
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