国内で分離されたBrachyspira hyodysenteriaeの薬剤感受性が低下している

タイトル 国内で分離されたBrachyspira hyodysenteriaeの薬剤感受性が低下している
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所
研究期間 2009~2009
研究担当者 大宅辰夫
末吉益雄
発行年度 2009
要約 過去25年間に国内で分離されたB. hyodysenteriaeのリンコマイシン、チアムリン、バルネムリン、タイロシン、エフロトマイシンに対する薬剤感受性を調べると、2001年以降の分離株でチアムリン、バルネムリン、エフロトマイシンの薬剤感受性低下がみられる。
キーワード 豚赤痢、Brachyspir属菌、薬剤感受性
背景・ねらい 養豚場において現在認識されている豚のスピロヘータ感染症は、Brachyspira hyodysenteriaeによる豚赤痢が主体である。豚赤痢の治療と予防を目的とした薬剤の適正な選択・使用を通しての生産段階における有効な防除対策の構築に資するため、過去25年間に国内で分離されたB. hyodysenteriae計72株の薬剤感受性の推移を調べる。
成果の内容・特徴 分離菌株の供試薬剤に対する感受性の測定は、CLSI(臨床検査標準協会)の提唱する寒天平板希釈法に準拠した方法で実施し、最小発育阻止濃度(MIC)を求める。供試した薬剤は、豚赤痢が適応症として承認されている動物用抗菌剤であるリンコマイシン(LCM)、チアムリン(TML)、バルネムリン(VN)、タイロシン(TS)およびB. hyodysenteriaeに対する抗菌活性を有する飼料添加物であるエフロトマイシン(EFRO)の5種類である。以下、薬剤濃度はμg/mlで示す。
  1. 分離年を1985~2000年、2001~2005年、2006~2009年に分け、各薬剤のMIC分布を調べた。TSを除く供試4薬剤で、二峰性のMIC分布が認められ、2001年以降の分離株、特に2006年以降の分離株でのTML、VN、EFROに対するMICの上昇が顕著である(表1)。
  2. 分離年毎の各薬剤に対するMIC90の推移を比較した。LCMおよびTSでは一貫して高値であり、近年これら薬剤が豚赤痢の治療に使用されることが少ないことの裏付けとなっている。TML、VN、EFROの3薬剤は、1985~2000年分離株のMIC90は低値であったが、2001年以降上昇がみられ、2006~2009年分離株ではTMLおよびEFROで4、VNで8と高くなっている(表2)。
  3. 表1のMIC分布に基づき、多くの株が高度耐性化しているタイロシンを除く4薬剤の感受性限界値をLCM 8.0、TML 0.5、VN 0.5、EFRO 1.0に設定し、これら薬剤に対する耐性パターンを比較した(表3)。1985~2000年分離株に比べ、2001年以降の分離株ではTML、VN、EFRO耐性株が増加している。また、同じpleuromutilin系抗生物質であるTMLおよびVN間の交差耐性が認められている。TML、VN、EFROの3剤に耐性をもつ株は、現在まで検出されていない。
  4. 臨床獣医師への聞き取り調査によると、2001年以降MIC90が上昇傾向にあるTML、VNではあるが、現時点では治療効果そのものは低下していないという。しかし、欧米では、最近TMLに対して32~64μg/mlの高いMICを示すB. hyodysenteriaeの検出が報告されている。
成果の活用面・留意点
  1. 従来有効であった薬剤、TML、VN、EFROに対して、耐性を示すB. hyodysenteriaeが増加している。近い将来、同じpleuromutilin系抗生物質であるTMLおよびVNに対する高度耐性B. hyodysenteriaeの出現が危惧されるため、2007年以降製造中止となっているEFROの早期の製造再開が期待される。
  2. 今後、耐性株を簡便・迅速に検出するための感受性ディスクを作製する必要がある。
図表1 233963-1.png
図表2 233963-2.png
図表3 233963-3.png
カテゴリ 病害虫 防除 薬剤

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