マルドリ方式のカンキツ経営への普及段階における技術導入の成否要因

タイトル マルドリ方式のカンキツ経営への普及段階における技術導入の成否要因
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 近畿中国四国農業研究センター
研究期間 2006~2009
研究担当者 齋藤仁藏
島 義史
発行年度 2009
要約 和歌山県有田地域においてマルドリ方式を導入した10経営では、高品質果実の生産量が多く安定しているものと、低いものがそれぞれ半数認められる。両者を比較した結果、後者ではマルドリ方式に適さない園地が選択され、この点はかん水管理状況からも確認できる。
キーワード マルドリ方式、ウンシュウミカン、園地選択、かん水管理、技術普及
背景・ねらい 和歌山県有田地域では、2006年時点でウンシュウミカンにマルドリ方式を導入するカンキツ経営が10経営に達している。これと平行して、高品質果実をブランド果実「紀の国有田まるどりみかん(以下、「まるどりみかん」と略記)」として高価格で販売している。しかし、これらの経営の全てがマルドリ方式をうまく利用できているわけではない。マルドリ方式の導入効果を得るためには適切な園地選択が重要であるが、実態分析から園地選択が技術導入の成否に関連していることを明らかにし、技術導入の効果を得るための留意点を示す。
成果の内容・特徴
  1. モデルケースの試算では、マルドリ方式の導入によって収益性を向上させるためには、「まるどりみかん」を1,000kg/10a以上出荷することが必要であるが(データ省略)、対象経営のうち、この条件を満たすもの(グループ1)は半数と判定される(表1)。その他のもの(グループ2)とマルドリ方式の導入、利用状況を比較したところ、以下の点が指摘できる。
  2. マルドリ方式導入後,高品質果実の生産比率を高められた経営では、適切な園地選択が行われている(表2)。グループ1では、導入前から(1)果実品質が高く、収量も多い、(2)乾燥しやすく、樹勢低下や隔年結果が生じる、(3)樹齢が若く、樹の状態も良いなど、マルドリ方式の効果を発揮しやすい園地が選択されている。一方、グループ2では、(1)糖度が低いなど、果実品質に問題がある、(2)水分ストレスの制御が難しい、(3)樹齢が高い、(4)樹や園地条件にムラがあるなど、マルドリ方式の効果が発揮しにくい園地が選択されているケースが多い。
  3. グループ1では、石垣階段園、平坦園、水田転換園と、一般に排水条件が良い順にかん水量、かん水頻度ともに多い傾向にあるが、グループ2ではそのような傾向はみられない(図1)。その原因として、グループ2では水田転換園で根が深く伸びているため、かん水によるコントロールが難しくなっていることや、園地条件のムラや複数品種の栽培によってかん水管理が複雑化していることなど,園地条件の影響を指摘できる。また、グループ1では、かん水状況を記録するなど几帳面に観察を行っている生産者が多い。
成果の活用面・留意点
  1. マルドリ方式の導入や普及を検討している産地では、技術導入の効果を確実に得るために以下の点に留意する必要がある。1)適切な園地選択の推奨~~マルドリ方式の導入によって十分な効果を得るには、条件が整った園地が選択されるよう関係機関が指導、推奨したり、情報提供することが必要である。2)園地条件や天候に適応した水管理技術の向上~~かん水の時期や量を園地条件や天候によって調整できるように経営者の観察力や判断力を向上させる取り組みが必要である。3)マニュアルの整備・更新~~マニュアルの更新などによって具体的な対策を示し、園地選択やかん水方法などに関する十分な判断材料を生産者に与えることが必要である。4)マルドリ方式の導入に関する事業要件の整備~~補助事業等によって導入を促進する場合、適地への導入やかん水記録の記載や保管などを事業採択要件として整備する必要がある。
図表1 234118-1.png
図表2 234118-2.png
図表3 234118-3.png
カテゴリ 温州みかん 乾燥 経営管理 出荷調整 水田転換園 品種 水管理 その他のかんきつ

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