タイトル |
殺虫剤の分解物は河川で水生節足動物に影響を及ぼしているのか? |
担当機関 |
(独)農業環境技術研究所 |
研究期間 |
|
研究担当者 |
横山淳史
岩船 敬
堀尾 剛
|
発行年度 |
2009 |
要約 |
6種類の殺虫剤とその分解物について河川水中濃度を経時的に測定したところ、3種類の殺虫剤で分解物の水中最高濃度が殺虫剤そのものよりも高いことが分かりました。しかし、分解物の水中最高濃度は水生節足動物(ミジンコとトビケラ)の半数影響濃度よりも明らかに低く、分解物による水生節足動物への影響は小さいと考えられました。
|
背景・ねらい |
農耕地で使用される農薬は河川等の環境中へ流出する危険性があります。また、農薬によっては環境中で速やかに分解され、その分解物が高い生理活性を有することがあります。しかし、分解物の生態系に対する影響はほとんど評価されていません。本研究では、水田等で広く使用されている殺虫剤とその分解物について、河川での消長を調査し、代表的な試験生物であるオオミジンコと河川において重要な一次消費者であるコガタシマトビケラの2種の水生節足動物に対する急性毒性を調べました。
|
成果の内容・特徴 |
- 水田が多い茨城県南部の桜川中流域において、4月から8月にかけて6種類の殺虫剤とその分解物の水中濃度を調査しました。それぞれの最高濃度を比較すると、殺虫剤に比べてその分解物の方が低いもの(ダイアジノン、フェニトロチオン、アセフェート)と、分解物の方が高いもの(カルボスルファン、ベンフラカルブ、フェンチオン)がありました(図1、図2)。
- 水生節足動物のミジンコやトビケラに対する分解物の半数影響濃度は、殺虫剤に比べ高くなるもの(カルボスルファン、ベンフラカルブ)、同程度(10倍以内の差)のもの(ダイアジノン、フェニトロチオン、フェンチオン)、低くなるもの(アセフェート)など様々で、殺虫剤が環境中で分解されても、水生節足動物に対する毒性は必ずしも低下しないことがわかりました(図2)。
- 今回の調査結果では、殺虫剤と分解物の水中最高濃度は、水生節足動物に対する半数影響濃度に比べ、20分の1以下であることがわかりました。したがって分解物の水中最高濃度が殺虫剤よりも高かったカルボスルファン、ベンフラカルブ、フェンチオンであっても、桜川中流域においては、これらの分解物による水生節足動物に対する影響は小さいと考えられました(図2)。
- 以上のように河川においては、水生節足動物に対して殺虫剤と同程度の毒性を有する分解物の水中濃度が、もとの殺虫剤より高まることがありました。したがって、水生節足動物に対する殺虫剤の影響を総合的に評価するには、殺虫剤の分解物の河川水中での消長や水生節足動物に対する急性毒性も調べる必要があります。
|
成果の活用面・留意点 |
本研究の一部は「2008年度住友財団環境研究助成」による成果です。
|
図表1 |
|
図表2 |
|
カテゴリ |
病害虫
水田
農薬
|