タイトル |
内蒙古半乾燥地域における過放牧による砂漠化過程の特性 |
担当機関 |
農業環境技術研究所 |
研究期間 |
1990~1994 |
研究担当者 |
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発行年度 |
1994 |
要約 |
中国内蒙古半乾燥地域で、緬羊の過放牧による砂漠化過程を解明するため、放牧試験を行った。放牧圧が高まると、起伏のある場所では流動砂丘の指標植物とされるAgriophyllumがみられた。裸地化はまずこうした起伏のある場所から生じることがわかった。
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キーワード |
緬羊、過放牧、砂漠化過程、放牧試験、Agriophyllum
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背景・ねらい |
中国東部の半乾燥地域では近年、人口増加にともなう過放牧や不適切な耕作活動等によって砂漠化が進行しており、その実態解明と対策が緊急の課題となってい る。そこで、過放牧による砂漠化が問題となっている内蒙古自治区奈曼において放牧試験を行い、緬羊の過放牧にともなう植生退行過程を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 放牧試験は1992年~1994年までの、毎年5月中旬から9月中旬にわたって行った。試験区の植生は放牧圧や微地形の違いに応じて、種組成からいくつかのタイプに分類された。禁牧区や軽放牧区(2頭/ha)ではイネ科のPennisetumやマメ科のLespedezaの優占する群落がひろくみられ、中放牧区(4頭/ha)や重放牧区(6頭/ha)では家畜の嗜好性の劣るイネ科のAristidaやトウダイグサ科でほふく型のEuphorbia (コニシキソウ)の優占する群落が平坦部を中心に分布した。一方、比高が大きくなるような、起伏のある地点では、低牧区でも流動砂丘の指標種とされるアカザ科のAgriophyllumを含む群落がみられた(図1)。
- 放牧にともなう植生の量的な変化と微地形との関係を調べた結果、軽放牧区と中放牧区全体の差は有意ではなかった。しかし、中放牧区では比高の大きい地点で優占度が有意に減少しており、放牧圧が加わるとまず起伏のある部分から裸地化がはじまることがわかった。また、平坦部でも一部で裸地の形成が認められた(図2)。
- これらの結果から、同地域で砂漠化を引き起こさないような持続的な放牧活動を行うためには、以上のような微地形の違いを考慮するとともに、Agriophyllumなどの指標植物を活用するなど、きめ細かな土地利用計画にもとづいた利用を図っていく必要性が示唆された。
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成果の活用面・留意点 |
現地における、適正な放牧利用計画のための基礎資料として活用できる。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
いぐさ
乾燥
羊
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