モンゴル国の草原における牧民による自立的な井戸改修・維持管理手法の開発

タイトル モンゴル国の草原における牧民による自立的な井戸改修・維持管理手法の開発
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2005~2009
研究担当者 山中勇
松本武司
発行年度 2009
要約 モンゴル国の草原において、井戸を拠点とした牧民のグループ化を行い、井戸修理チームによる井戸修理・維持管理体制を確立した。あわせて、資金調達の手段として羊を拠出することによるファンドを設立し、これを運営することで、牧民による自立的な井戸改修・維持管理ができる仕組みを開発した。
キーワード モンゴル国、草原、井戸、維持管理、羊ファンド
背景・ねらい モンゴル国の草原における水資源の多くは井戸である。これらのうち動力による揚水を行うような深井戸は行政による改修等が計画的に行われるが、深さ10m程度の浅井戸は改修や維持管理が行われず利用不能となっているものも多く、家畜の飲み水を確保できないことから放牧地の有効利用を阻害している。この主な原因は、a)改修・維持管理の責任の所在が明らかでない、b)改修・維持管理するための資金がない、c)地元に改修・維持管理する技術と体制がない、の3点である。このため、これらの問題を改善し、井戸の利用主体である牧民自身が、自立して改修や維持管理ができる仕組みを創出し、井戸の有効利用を図る。
成果の内容・特徴
  1. 井戸を利用する牧民は、牧民グループ(10~20世帯)を創設し井戸改修計画を作成する。このことで牧民グループの井戸へのオーナーシップを高め、維持管理の実施主体を明確にする。
  2. 井戸の改修や維持管理費を支弁する都度、関係の牧民から現金を徴収するシステムは、牧民の経済観念や現金管理の面でうまく機能しない。このため、牧民にとって抵抗感の小さい羊の生体拠出という方法で「羊ファンド」をあらかじめ牧民グループ内に設け、これを財源として井戸改修費用等に当てる。これにより井戸の改修・維持管理の実施促進を図る(図1)。
  3. 「羊ファンド」の羊は、グループの各牧民が、常に1頭の成雌羊をファンドの拠出分として飼育する。ファンドに拠出した個体は明確にして管理する(図2)。井戸の改修・維持管理の際には、これらをあらかじめ決めた順番に現金化する。
  4. バグ(村)行政は、バグ内のグループの牧民の中から、井戸を専門的に改修・維持管理するために必要な3名を選抜し、「井戸修理チーム」としてバグ内に組織する。このチームの井戸改修・維持管理のための技術力の養成を、井戸改修マニュアルや技術研修により行う。
  5. 以上の仕組みによる井戸改修・維持管理の実施の流れは以下のとおりである(図3)。
    1. 牧民グループはバグ行政を通じ、「井戸修理チーム」に井戸の改修・維持管理要請を行う。
    2. 「井戸修理チーム」が対象井戸の改修・維持管理の作業を実施する。
    3. グループは、改修・維持管理に要した費用を「羊ファンド」から支出する。
  6. 2009年12月現在、モンゴル国ウブルハンガイ県内に21グループが創設され、うち2グループが井戸改修を行った。モンゴル政府もこの手法を高く評価し、広範囲に適用すべく、井戸の維持管理のための手法として認知する手続きを始めている。
成果の活用面・留意点
  1. この方法により井戸の有効利用が可能となり今後放牧地の有効利用範囲の拡大が期待できる。
  2. 羊ファンドの詳細な運用規約をグループ毎に決めておくことが必要である。
図表1 234225-1.gif
図表2 234225-2.gif
図表3 234225-3.gif
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