幼苗期における在来品種の窒素反応は、改良品種よりも敏感である

タイトル 幼苗期における在来品種の窒素反応は、改良品種よりも敏感である
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2006~2010
研究担当者 生井幸子
鳥山和伸
福田善通
発行年度 2009
要約 イネの相対乾物生産重率と吸収窒素あたりの乾物生産効率には、顕著な品種間差異が幼苗期で認められ、在来品種は改良品種よりも窒素に対する反応が敏感であり、効率的乾物生産が可能である。
キーワード イネ、品種間差異、窒素反応、乾物生産
背景・ねらい イネの生育にとって必須要素である窒素の吸収と乾物生産に関する遺伝的な要因を解明することは、水や土壌肥沃度などで制限のある環境下の陸稲地帯や天水田に適応したイネを開発する上で重要である。また灌漑水田などの栽培管理が容易な好適条件下においても、肥料の低投入でも効率的な生産が可能な、環境に負荷の少ない品種開発に役立てることができる。このために、イネ品種における窒素反応に関する品種間差異を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 生態型(インド型および日本型)、さらに改良の違い(在来品種から近代改良品種)を考慮した合計31品種・系統(表1)を脱イオン水で24日間育苗後、窒素濃度が0mgNL-1~80mgNL-1の8段階の水耕液で14日間栽培し、各窒素濃度の乾物生産の差異を0mgNL-1区との比(RDW:相対乾物重率)で比較すると、栄養生長(幼苗)期に顕著な品種間差が確認できる。
  2. これら31品種・系統は、7段階の各濃度における相対乾物重率を用いたクラスター解析(Ward法)の結果から、5つのグループ(Ⅰ-Ⅴ)に分けられる。(表1)
  3. 相対乾物重率と窒素利用効率の最も高いのは、インド型の在来品種のKasalath(Ⅰ)であり、最も低いのは国際稲研究所(IRRI)が開発した半矮性品種群や日本の近代改良品種群など(Ⅴ、10品種)である。
  4. 他の3つのグループは、インドの2品種(Ⅱ)、陸稲を中心とする8品種(Ⅲ)、在来品種と改良品種が混ざる9品種(Ⅳ)である。
  5. 相対乾物重率と窒素利用効率(PNUE:吸収窒素1g当たりの乾物生産量)との位置関係から、5グループを比較すると、どの窒素濃度でも同様な関係が認められ在来品種と改良品種との間では顕著な差異があるが、日本型やインド型などの生態型の異なる品種間差は明確でない(図1)。
成果の活用面・留意点
  1. Kasalathなどの在来品種の中に極めて窒素反応の良いものがあり、これら品種は低窒素条件下でも旺盛な生育が期待でき、高乾物生産性イネの開発研究に利用することができる。
  2. 本試験では硝酸アンモニウムを窒素源として用いた。今後は、吸収窒素源の違い(アンモニア態と硝酸態窒素)の影響について明らかにしていく必要がある。
  3. 本結果は、窒素の反応が最も顕著とされる幼苗期の結果であり、以降の生育期についての影響や反応についても検討していく必要がある。
図表1 234229-1.gif
図表2 234229-2.png
カテゴリ 肥料 育苗 栽培技術 水田 品種 品種開発 陸稲

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