SnRK2型タンパク質リン酸化酵素は乾燥耐性と種子休眠を制御する

タイトル SnRK2型タンパク質リン酸化酵素は乾燥耐性と種子休眠を制御する
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 2006~2011
研究担当者 中島 一雄
藤田 泰成
篠崎 和子
発行年度 2009
要約 3種類のSnRK2型タンパク質リン酸化酵素の遺伝子が変異したシロイヌナズナでは、乾燥耐性や種子休眠性の低下、アブシシン酸に対する感受性の低下が見られ、これらのタンパク質リン酸化酵素は、アブシシン酸による乾燥耐性と種子休眠の制御において重要な役割を担う。
キーワード シロイヌナズナ、タンパク質リン酸化酵素、アブシシン酸、乾燥耐性、発芽
背景・ねらい 植物の乾燥耐性と発芽の制御技術を開発することは、安定した農業生産や地球環境の維持のためにも重要である。植物の乾燥耐性と発芽の制御は、植物ホルモンのアブシシン酸(ABA)により制御されていることが知られている。これまでに、乾燥応答で重要な役割を果たしている転写因子AREB1は、ABA存在下、3種類のSnRK2型タンパク質リン酸化酵素SRK2D、SRK2E、SRK2Iによって転写活性化することを試験管内実験で明らかにしている。本研究では、シロイヌナズナの変異体を用いて、SRK2D、SRK2E、SRK2Iの乾燥耐性・発芽制御における役割を明らかにすることを目的にする。
成果の内容・特徴
  1. SnRK2型タンパク質リン酸化酵素SRK2D、SRK2E、SRK2Iの単一遺伝子変異シロイヌナズナから作出したsrk2d, srk2e, srk2i 三重変異体(d/e/i)は、高湿度(湿度80%程度)では生育できるが、通常生育条件(湿度60%程度)では生育できない(図1A)。d/e/i変異体の葉の水分は、乾燥させると急激に低下する(図1B)。種子の乾燥耐性も弱い。野生型植物体や一重変異体、二重変異体では、このような表現型はみられない。
  2. d/e/i植物体を高湿度条件で栽培すると、種子休眠性の低下が見られた(図2A)。一重、二重変異体では、同じ条件で栽培しても種子休眠性の低下はみられない。
  3. d/e/i種子は、一重、二重変異体より、はるかに高濃度のABAを含む培地でも発芽する(図2B)。d/e/i植物体もABAに対する感受性がきわめて低い。
  4. ストレスを受けたd/e/i植物体や種子では、LEA (Late Embryogenesis Abundant) タンパク質をコードする遺伝子やタンパク質脱リン酸化酵素(PP2C)遺伝子等、多くのABAあるいはストレス応答性遺伝子の発現が野生型より減少している。
  5. 乾燥応答で重要な働きをする転写因子AREB1群の変異体において発現レベルが低下している遺伝子や、種子で重要な働きをするAREB1相同性転写因子ABI5の変異体において発現レベルが低下している遺伝子群の多くは、d/e/i変異体においても発現レベルが低下している。
  6. SRK2E遺伝子は主に気孔で、SRK2DSRK2I遺伝子は他の組織で発現している。
  7. 以上の結果は、発現部位は異なるが機能重複しているSRK2D、SRK2E、SRK2Iは、ABAによる乾燥耐性と種子休眠の制御において重要な役割を担うことを示す(図3)。
成果の活用面・留意点 活性型SnRK2型タンパク質リン酸化酵素遺伝子の過剰発現などにより、乾燥耐性が向上した植物や穂発芽しにくい作物を開発できることが期待される。
図表1 234230-1.png
図表2 234230-2.png
図表3 234230-3.png
カテゴリ 乾燥

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