選抜育種した高水温耐性品種の養殖現場における既存品種との特性の差異

タイトル 選抜育種した高水温耐性品種の養殖現場における既存品種との特性の差異
担当機関 千葉県水産総合研究センター
研究期間
研究担当者 島田裕至
発行年度 2009
要約 千葉県ノリ養殖の年内生産量は、水温上昇等によって変動が大きく近年は減少傾向にある。これに対応するため、室内選抜育種によって高水温に耐性を有するノリ系統を作出した。この系統を秋芽生産期に既存品種と合わせて野外養殖比較試験を行った結果、生長性および乾しノリ製品の品質が優れていることを確認した。
背景・ねらい ノリは「運草」とも呼ばれ、養殖生産の状況は気象や海況に大きく左右される。中でも水温はノリ葉体の生育に大きく影響を与える要因となる。東京湾の水温は1970年代に比べると1990年代以降上昇しており、特に秋季のノリ養殖にとって重要な育苗期から生産初期の上昇が顕在化している。このため、近年では育苗開始期の遅れや、育苗期から生産初期の水温停滞によるノリ葉体の生長鈍化や流失などが、ノリ養殖の生産量、特に単価の高い年内生産量の減少の一要因となっている。
そこで、本研究では、年内生産量の増大と安定化を図ることを目標に選抜育種した高水温耐性品種の特性を実際の野外養殖試験で比較し、既存品種との差異を確認した。
成果の内容・特徴
  1. 新品種の育成経過は次のとおりである。平成17年漁期に県内15漁場において通常よりも早期の高水温下(25℃を目安)で網を張り込み複数の候補株を選抜した。平成17年から18年には実験室内で単胞子継代による選抜を行い純系化し、優良な系統を選抜した。
  2. 平成19、20年に候補系統の野外養殖による比較検定試験を行い、秋期の生長性、流失抵抗性および収量性に優れる1系統を確認した。なお、この品種は平成21年9月に品種登録申請を行った。
  3. 確認した新品種の特徴は次のとおりである。
    • 生長性は育苗期から秋芽生産期に至るまで対照品種(KN,U-51)よりも優れ、収量性が高い(表1、図1・2)。
    • 風波による葉体の流失が少ない(表1)。
    • 葉形は極めて細く、対照品種の約2倍の葉長葉幅比(葉長/葉幅)である(表1)。
    • 栄養繁殖性(単胞子放出)は極めて低く、単胞子を放出しない場合が多い(表1)。
    • 葉の厚さは薄い(表1)。
    • 乾ノリの等級は優れる(表1)。
成果の活用面・留意点
  1. 品種登録出願中である。
  2. 21年度漁期には本品種の県内普及を目的とした生産者による試験養殖が行われる。
  3. ノリ養殖における品種特性は養殖方法(支柱式や浮き流し式)や漁場特性等に左右される。千葉県内でも各地区により養殖方法や漁場特性が異なるため留意が必要である。
図表1 234266-1.png
図表2 234266-2.png
図表3 234266-3.png
カテゴリ 育種 育苗 新品種 抵抗性 繁殖性改善 品種

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