タイトル |
イワガキ小型貝の耳吊り育成技術の開発 |
担当機関 |
京都府農林水産技術センター |
研究期間 |
2003~2008 |
研究担当者 |
藤原正夢
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発行年度 |
2009 |
要約 |
養殖イワガキや天然イワガキの出荷時に出てくる商品サイズに満たない小型貝を、商品サイズまで効率的に育てる方法として、カゴ網方式よりも省力的で低コストな耳吊り方式による養殖手法を開発した。
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背景・ねらい |
イワガキ養殖では十数個のイワガキが付着した塊状態で育て、1個体ずつ分離して出荷するため、商品サイズに満たない小型貝が一定割合で出現する。また、天然イワガキも密集状態で岩盤等に付着していることが多いため、漁獲時に岩盤から剥がした貝の中には商品サイズに満たない小型貝が混入する。こうした小型貝を有効に利用するため、商品サイズまで効率的に育てる方法として耳吊り方式による育成手法を開発した。
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成果の内容・特徴 |
- 異なるサイズの小型貝を用いて京都府の栗田湾内で約1年間の耳吊り育成を行ったところ、生残率は100%(60/60)であった。商品サイズ(全重量300g以上)に成長した貝の割合は、開始時の全重量が150~200gの貝では77%(13/17)、200g以上では100%(34/34)であった(図)。
- 垂下ロープへの貝の取り付け間隔を1、5および20cmにして1年間耳吊り育成した結果、これら3試験区の成長・生残に大きな差は見られなかった(写真、表)。取付時及び出荷時の作業性を考慮すれば5~20cmが適当と考えられる。
- 耳吊り資材にはホタテガイ養殖用のプラスチック製の「アゲピン」を用いることは可能だが、付着生物除去に必要なバーナー処理が実施できない。そこで、「アゲピン」に代わる資材を検討するために、市販の各種針金を用いた比較試験を実施した。鉄製針金(径1.8mm)では1年経過後には腐食が進み、貝が脱落しているものが多く見られたが、ステンレス製針金(径1.2~1.6mm)では2年経過後でも腐食による貝の脱落は見られなかった。ステンレス製針金は、「アゲピン」よりも安価で、バーナー処理可能な耳吊り資材として利用できることが明らかになった。
- 小型貝の養殖方法には、今回の耳吊り方式の他にカゴ網による方法もあるが、付着物による目詰まりのため数ヶ月毎にカゴ網の交換が必要でその作業量は多い。一方、耳吊り方式の場合は付着生物が多い年だけ年一度のバーナー処理作業のみで、作業量は格段に少ない。さらに養殖のための資材費もカゴ網養殖に比べ数分の1と非常に少ない。
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成果の活用面・留意点 |
天然貝の身入りは養殖貝よりも低いが、天然小型貝を1年間耳吊り養殖することにより養殖貝並みの身入りに改善できる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
出荷調整
低コスト
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