シロクラベラの初期生態の解明

タイトル シロクラベラの初期生態の解明
担当機関 (独)水産総合研究センター 西海区水産研究所
研究期間 2006~2009
研究担当者 山田秀秋
福岡弘紀
浅見公雄
小林真人
佐藤 琢
武部孝行
青沼佳方
名波 敦
鈴木伸明
発行年度 2009
要約 採集調査および耳石日周輪分析により、本種は3月前後にふ化し、1ヵ月余りの浮遊期間を経た後、干潟域に着底し、徐々に深所へ移動することを明らかにした。本種は、産卵期が他のサンゴ礁性魚類よりも著しく早いため、着底期も早かった。4月前後の干潟域は捕食者が少なく餌料環境も優れていることから、早期産卵・干潟着底は、シロクラベラの生き残りを高める上で重要な生態的意義があると考えられた。
背景・ねらい シロクラベラは、沖縄三大高級魚の一つとされ、高値で取引される重要な沿岸魚類である。本種の資源量は低迷しており、種苗放流による資源回復が期待されている。しかし、天然海域における着底様式や成長等の知見がほとんどないため、放流方法(放流時期、サイズなど)を検討する際の情報が乏しい。そこで、本研究では、放流技術の高度化を図るための基礎資料を集積することを目的とし、天然海域における初期生態を調べた。
成果の内容・特徴 日齢既知の人工種苗を用いた分析により、本種の礫石に認められる微細な輪紋が日周輪であることが証明された(図1)。全長ー耳石径関係は仔魚期を終える頃に大きく変化した(図2)。また、耳石日輪間隔も変態期に最大となった(図3)。天然個体の採集調査および耳石日周輪分析から、シロクラベラは3月前後にふ化し、1ヵ月余りの浮遊期間を経た後、干潟域に着底することが明らかとなった。着底後は約0.5mm/dayの速度でほぼ直線的に成長した(図4)。相対成長の分析から、多くの個体は着底時には変態が完了していないと考えられた。着底後は、徐々に深所へと移動し、5月~7月はアマモ場、8月以降はサンゴ礁域に主に分布した。サンゴ礁性魚類の多くは夏季にアマモ場またはサンゴ礁に着底することから、シロクラベラの着底様式は他に例をみない特異的なものであることが判った。4月前後の干潟域は、魚食性魚類は少ない上に、ハルパクチクス類等の餌料生物が多量に分布していた。天然魚の採集密度と耳石日輪間隔との関係を分析した結果、浮遊期の成長が加入量に重大な影響を及ぼしている可能性が示唆された。
成果の活用面・留意点
  • シロクラベラの放流技術の高度化を図る際の基礎資料となる。特に、本研究で明らかとなった生き残り戦略は、小型種苗の放流場所・時期を選定する際に指標として利用できる。
  • 将来的には、浮遊期の成長速度の変動機構を解明することにより、加入量の予測技術の開発にも寄与できる。
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図表2 234298-2.jpg
図表3 234298-3.jpg
図表4 234298-4.jpg
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