ヤコウガイの放流技術開発

タイトル ヤコウガイの放流技術開発
担当機関 鹿児島県水産技術開発センター
研究期間 1991~2008
研究担当者 田原 義雄
発行年度 2009
要約 奄美群島の有用種であるヤコウガイ資源の増殖を図るため、当センターで生産したヤコウガイ稚貝の放流技術開発試験を行った。殻高30mm程度の種苗を放流した場合、年間、約40mm程度成長し、3年で漁獲サイズに達すること、減耗の最大要因は食害と考えられ、放流時期は秋季から冬季、放流サイズは殻高30mm以上が望ましいこと、市場調査により放流貝の混獲率は12.4%と試算されたこと等の成果が得られた。
背景・ねらい ヤコウガイは奄美海域の磯根資源の中で、重要な漁獲対象種であるが、近年漁獲量が減少している。本種の資源の増大を図るためには、生産された種苗の放流技術開発が重要な課題であることから、放流種苗の一般的生態の把握や効果的な放流手法を確立することを目的に試験を実施した。
成果の内容・特徴
1.一般生態:
殻高30mm程度の種苗を放流した場合、成長(殻高)は年間40mm程度で、放流後約2年で成熟サイズ(殻高約120mm)に、約3年で漁獲サイズ(殻高約150mm、重量約1kg)に達することがわかった(図2)。稚貝の生息場所は、リーフ先端部の潮間帯であり、これまで、殻高約70mm以上のサイズの個体は潮間帯で採捕されないことから、殻高が70mmに達してからは、漸進帯に移動し、さらに成長とともに沖側(深場)に移動するものと考えられる。
2.放流手法
  1. 放流適地:リーフエッジの潮間帯で、微小もしくは小型の海藻が生育し、放流後の成長に合った多様な穴や窪みがあるところで、沖側に向かって礁斜面が連続する場所が適している。
  2. 放流サイズ:これまでの試験結果から、放流時の殻高が30mmを越えると再捕率が比較的高いことから、殻高30mm以上が放流サイズとして望ましい(表1)。ただし、今後、種苗生産コストとの関係を検証することが必要である。
  3. 放流適期:殻高30mm以上で放流を実施しても、他の時期に比較して夏季の再捕率が低い、これは、砕かれた稚貝の殻の破片が確認できることから、夏季の減耗の原因は食害と考えられる。そのため、夏季の放流を避け、夏季までに食害の影響の少ないサイズまで成長できる秋~冬季の放流が望ましい(図3)。
3.放流効果試算:
沖永良部島漁協による市場調査により、平成20年1月から12月に放流貝は365個回収された。当期間に水揚げされたヤコウガイの総漁獲個数は2,943個と推定され、放流貝の混獲率は12.4%(=365/2943×100)と試算された。また、これまで放流したヤコウガイ稚貝の個数が9,800個(平成8~16年)であることから、回収率は3.7%(=365/9800×100)と試算された。
成果の活用面・留意点 当センターで得られた知見や放流技術を関係団体等へ広く普及することで、放流事業や資源管理等の改善が図られる。
図表1 234314-1.png
図表2 234314-2.png
図表3 234314-3.png
図表4 234314-4.png
カテゴリ コスト

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