タイトル |
ウンシュウミカン加工副産物からβ−クリプトキサンチンを簡便に製造する方法 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 |
研究期間 |
2007~2010 |
研究担当者 |
小川一紀
尾﨑嘉彦
片桐且元
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発行年度 |
2010 |
要約 |
ウンシュウミカン加工副産物のパルプから溶媒分画のみで濃度15%のβ–クリプトキサンチン高濃度含有物と高純度の遊離型β−クリプトキサンチンを、果皮からは溶媒分画と簡易なクロマトグラフ分離により高純度遊離型β−クリプトキサンチンを製造できる。
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キーワード |
β–クリプトキサンチン、ウンシュウミカン、加工副産物
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背景・ねらい |
疫学研究により、ウンシュウミカンに含まれるβ-クリプトキサンチン(β−CRY)には、アルコールあるいは高血糖による肝障害、骨密度低下、インスリン抵抗性、動脈硬化、メタボリックシンドロームのリスク低下との関連から生活習慣病予防の可能性があることが示唆されている。現在、遊離型のβ−CRYの製造には大型の分取用高速クロマトグラフ装置(HPLC)が使用されており、高額な装置、長い分離時間、多量の分離液、限られた処理量などの要因により、β−CRYの市販価格は極めて高い。そこで、HPLCを使用せずに、ウンシュウミカン加工副産物から高濃度のβ−CRY含有物および高純度の遊離型β−CRYを、簡便かつ低コストで製造する方法を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- ウンシュウミカンの乾燥パルプを原材料にβ−CRY含有物を製造する場合には、ヘキサン抽出物を、ヘキサン、エタノール、ヘキサン/エタノール(4:6)の3種類の溶媒への溶解性により、可溶部と不溶部に順次分画することで、低、中、高の3段階の濃度のβ-CRY含有物を得ることができる(図1A)。使用目的に応じて、濃度の異なるβ−CRY含有物を選択できる。
- ウンシュウミカンの乾燥果皮を原材料にβ−CRY含有物を製造する場合には、ヘキサン抽出物から水エタノールと共に精油を減圧溜去した後、ヘキサン、エタノールの2種類の溶媒を用い、パルプと同様に順次分画することで、低、中の2段階の濃度のβ−CRY含有物が得られる(図1B)。
- 高純度の遊離型β−CRYは、パルプを原料とする場合には、HPLCによる分離を行うことなしに、高濃度β−CRY含有物のアルカリ加水分解と再結晶操作のみで得られ(図1A)、果皮を原料とする場合には、中濃度β−CRY含有物を得た後、アルカリ加水分解を行い、簡易なクロマトグラフ分離を行うことで得られる(図1B)。
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成果の活用面・留意点 |
- ウンシュウミカン加工副産物を活用して、加工産業や食品産業においてβ−CRYを含有する製品開発に利用できる。
- ウンシュウミカンのほか、カキ果皮などのβ−CRYを含む果実あるいはその加工副産物からも高濃度含有物が得られる。
- 従来法は、大型の分取用高速クロマトグラフ装置を使用するため、遊離型β−CRYの販売価格は1gあたり数百万円とされる。一方、本方法で遊離型β−CRYを1g製造する時に必要な機材は、実験室用の遠心機、エバポレーター、冷凍装置でよく、有機溶剤のコストも数万円程度である。
- 有機溶媒を利用することから、安全面に留意する。
- 本製造法は特許出願済である。
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図表1 |
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カテゴリ |
温州みかん
かき
加工
乾燥
コスト
抵抗性
低コスト
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