タイトル |
国内で初めて検出されたカンキツウイロイドV |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 |
研究期間 |
2006~2010 |
研究担当者 |
伊藤隆男
太田 智
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発行年度 |
2010 |
要約 |
海外で報告のあるカンキツウイロイドV(CVd-V)が、国内のカンキツから初めて検出され、少なくとも2変異株が認められる。遺伝子診断調査により275樹のうち44樹で陽性と確認され、国内ですでに分布しているものと推察できる。
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キーワード |
カンキツ、ウイロイド、検定、診断用プライマー
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背景・ねらい |
カンキツに感染するウイロイド(環状1本鎖RNAのみから成る病原体)として、これまでに6種類が報告され、全て国内に存在することが知られる。最近、7種類目となる新種のカンキツウイロイドV(CVd-V)が海外で発見され、アメリカ、スペイン、ネパール、オマーンのカンキツから検出されている。日本国内での分布も懸念されるため、国内のカンキツからCVd-Vの検出を試みる。
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成果の内容・特徴 |
- 逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を用いた既報の遺伝子診断(Serra et al. 2008)により、CVd-Vが国内のカンキツから初めて検出される。
- 国内のCVd-Vには、遺伝子の塩基配列が異なる、少なくとも2変異株が存在する(図1)。
- 新たに設計した2変異株に共通の塩基配列を検出するプライマー(表1)を利用したRT-PCRによる遺伝子診断で、CVd-Vを安定的に検出することができる(図2)。
- RT-PCRにより、CVd-Vの国内での分布を調べたところ、調査した275樹のうち44樹で陽性を確認する。調査樹の中で、一般圃場から採集したものは152樹であり、そのうちの37樹で陽性であったことから、国内にCVd-Vがすでに分布するものと推察できる。
- 陽性樹は「不知火」が36樹と最も多く、樹勢の低下やカラタチ台木の病徴を示すものも見られるが、他の数種ウイロイドとの混合感染が多いため、「不知火」等の栽培樹に対するCVd-Vの影響の程度については、今のところ確認できていない。
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成果の活用面・留意点 |
- CVd-Vの特異的遺伝子診断の手法は、母樹検定等に利用して、無毒カンキツ苗の供給に役立てることができる。
- 栽培カンキツ樹に対する影響は、CVd-V単独感染の場合、および他のウイロイドとの混合感染の場合も現状では不明であり、今後の調査が必要である。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
台木
その他のかんきつ
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