タイトル |
携帯型の牛用脳幹機能測定装置 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所 |
研究期間 |
2006~2009 |
研究担当者 |
新井鐘蔵
宮城澄義
當真陽一
中野貞雄
麻生 博
渡邉 剛
草刈直仁
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発行年度 |
2010 |
要約 |
神経症状を呈する牛の脳幹機能を野外で検査できる、携帯型の牛用脳幹機能測定装置の試作器を開発し、この試作器は牛の聴性脳幹誘発電位の同時再現性に優れ、検査室内設置型の既存器と同等の性能を有し、野外においても良好な性能を発揮する。
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キーワード |
脳幹機能測定、携帯型、聴性脳幹誘発電位、牛
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背景・ねらい |
聴性脳幹誘発電位(BAEP)の測定は、動物の脳幹機能を非侵襲的に評価できる検査法であるが、検査装置にAC電源やアースの接続等を必要とするため検査室内での使用に限られている。痙攣や起立不能などの神経症状を呈している牛(特に成牛)は、農場の現場から動かすことが困難なことから、これらの牛について脳幹機能検査を実施するためには野外への持ち出しが可能な携帯型のBAEP測定装置の開発が必要となる。本研究では内蔵バッテリーで駆動する携帯型のBAEP測定装置、牛用解析ソフトウエア及び牛専用の付属器具類を試作し性能を検討する。
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成果の内容・特徴 |
- 試作器はAC電源とアースの接続を必要とせず、連続6時間の使用が可能な携帯型の牛用脳幹機能測定装置である(図1a)。牛用の解析ソフトウエアによりBAEP測定後に数値が自動計算・表示される。ホルスタイン種と黒毛和種の正常データが入力されており、画面上で視覚的に波形が正常範囲かどうかリアルタイムで確認することが可能。付属器具類(刺激用イヤホン、耳保定具、針電極)の使用により体動由来のノイズ混入は少なく、牛に軽度の鎮静処置をしてBAEP測定を立位下で安全に実施することができる(図1b)。
- 4頭の健康な成牛について、検査室内で試作器を用いて同一牛を刺激音圧105dBで10回BAEPを測定し、同時再現性を検討したところ、Ⅰ~Ⅴ各波の潜時の変動係数は5%未満で良好な再現性を示す。
- 4頭の健康な成牛について、検査室内で試作器と検査室内設置型の既存器との性能比較試験(刺激音圧65-105dB)を実施したところ、試作器のⅠ~Ⅴ各波の波形形状と潜時並びに波形の出現閾値は、既存器の測定値と比較して同等である(図2)。
- 放牧場において試作器を用いて牛(検査室内試験で用いた4頭)のBAEPを測定(刺激音圧65-105dB)したところ、試作器のⅠ~Ⅴ各波の波形形状と潜時は検査室内の測定値と同等(図3)で、野外の測定においても試作器は良好な性能を発揮できる。
- (用語)BAEP:
- 音刺激によって脳幹の各部位から発生する電位で、脳波の一種
- (用語)潜時:
- 音刺激を加えてからBAEP波形が出現するまでの時間
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成果の活用面・留意点 |
- 農場現場で牛のBAEPを測定し、脳幹機能を評価することができる。
- 牛ではBAEPの正常値に品種間差があるため、正常値が把握できているホルスタイン種と黒毛和種以外の品種については、別途、正常値の調査が必要である。
- 今後、臨床検査法としての活用を進めるためには、牛の脳疾患や代謝性の神経障害、聴覚障害等との類症鑑別に関する症例データを積み重ねる必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
品種
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