タイトル |
ヨーネ病ELISA陰性の感染牛におけるMMP-9の発現低下とTIMP-1の発現亢進 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所 |
研究期間 |
2010~2010 |
研究担当者 |
百溪英一
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発行年度 |
2010 |
要約 |
ヨーネ病不顕性感染時期の牛の末梢血をヨーネ菌抗原で刺激すると、炎症や腫瘍との関連が示唆されているマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)発現が非感染牛に比べ有意に抑制され、MMP-9阻害物質のTIMP-1が亢進する。
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キーワード |
ヨーネ病、不顕性感染、MMP-9、TIMP、ELISA
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背景・ねらい |
我が国ではヨーネ病を撲滅対象疾病に指定して、防疫対策を進めてきたが、年間50万頭の検査を実施するなかで1000頭以上の感染牛が摘発され続けている。担当者らはヨーネ病の病変の休止や拡大に細胞外マトリックス(ゼラチン)を変性させ、炎症細胞の遊走促進や腫瘍細胞の遊走・転移、血管新生に関与するMMP-9と、これを抑制するTissue inhibitors of matrix metalloproteinases-1(TIMP-1)が関与するとの仮説を立て、不顕性感染時期の牛を用いて遺伝子レベル、蛋白質レベルでの動態を解明した。
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成果の内容・特徴 |
- ウシのMMP-9mRNAの発現定量をおこなうためのPCRプライマーを設計して反応指摘条件を検討すると、良好な定量性を示すことが確認できる。
- MMP-9の活性を阻害する宿主蛋白質であるTIMP-1を検出するPCRプライマーを設計して評価すると、良好な定量性が確認できる。
- 健康牛5頭およびヨーネ病実験感染牛(不顕性感染時期)5頭の末梢血を採取して、10μgのヨーネ菌可溶化抗原で刺激後24時間には、図に示したとおり感染牛のMMP-9の発現は健康牛に比較し有意に抑制される。(図1A、B、左のグラフ)
- 同様に10μgのヨーネ菌PPD抗原で刺激後24時間には、図に示したとおり感染牛のMMP-9の発現は健康牛に比較し有意に抑制される。(図1A、B、左のグラフ)。
- 同様に刺激された末梢血中のTIMP-1の発現はMMP-9の変化と逆に感染牛で高まる(図1A、B、右のグラフ)。
- MMP-9mRNAの発現をザイモグラフィー法により蛋白レベルで比較すると、バンドで示されるMMP-9のゼラチン溶解能も明らかに低下することが示される(図2)。
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成果の活用面・留意点 |
- ELISA陰性を示す不顕性感染時のヨーネ病感染牛においてMMP-9活性が抑制されていることを初めて明らかにした。ヨーネ病の潜伏期間は3年から6年と長く、感染後長期間病変の拡大や発症が起こらない特徴があるが、病変の拡大抑制に血管基底膜を溶解して、炎症細胞の遊走を促進するMMP-9が関与する。
- MMP-9の活性はTIMP-1により阻害され陰性制御されることが知られているが、ヨーネ病感染においても、同様の制御機構が働いている。
- 牛のヨーネ病においてMMP-9の末梢血中の酵素活性を直接証明した報告はないが、ザイモグラフィー法で実際のゼラチン溶解活性が低下していることを確認した。
- 本研究結果を含めて牛のヨーネ病の病理発生の解明を進める必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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カテゴリ |
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